6/16/2010

Graduation

 先週には3年目の先生を送り出す卒業式があった。各先生の送辞に続いて、各卒業生の名前が読み上げられdiplomaが授与された。今年はfellowshipに進む人が少なかったせいか、例年のように「A先生はB病院に進みます」というような進路の紹介がなく、名前のみだったのが私には不服だった。なおこの卒業式は1年だけ内科をして他科に進むprelimとtransitionalの先生を送る場でもあるが、ここでは「A先生はB大学病院の麻酔科レジデンシーに進みます」というように進路を紹介していた。

 せっかく内科でトレーニングしたのに「C先生はD州のある街で内科医として開業します」と紹介するのが恥ずかしいことだなんて悲しい。総合内科のプログラムを3年修めた人が、総合内科医として働いていくことは素晴らしいことである。そもそもうちの病院はプライマリ志向が強い人が集まっている。他の病院ではフェローシップへ進む人が多いことをよいプログラムかどうかの指標のように考えているところもあるだろうが、うちの病院まで追従することはない。

 とはいえ、卒業生の顔も晴れやかで、式のあとには外に出て記念写真撮影、そしてreceptionの席で歓談した。来年は自分かと思うと、時がたつのは速いなと思う。来年、名前を呼ばれたときに三年間の苦労を思い起こすと胸に込み上げてくるものがあろう。未来志向で先のことを考えていれば、もっと晴れやかだろう。でも、節目だから前者のほうがいいのかもしれない。例年、人気のある先生は壇上にあがったときの拍手がことさら大きい。私もそうならいいと思う。

Procedures

 今月はMICUで、手技をする機会がとても多い。私は日本にいた時には手技があまり好きでなかったのだが、いまは好きだ。ひとつには手技キットが充実しているので準備が楽である。またMICUの各部屋は広く、ベッドの高さや傾斜も自在に変更できるのでポジショニングが楽である。看護師さんも一人1-2部屋(1-2人)担当なので無理なく手技に付いてくれる。さらに、肥満などで体表から解剖学的な位置を同定しにくいときには超音波を使うので確実である。そんなわけで毎日1-2件の手技をしている。中心静脈ライン、動脈ラインが多いけれど、腰椎穿刺、腹腔穿刺もやった。胸腔穿刺はたいていpulmonary critical careのフェローがする。気管内挿管は、麻酔科の仕事なのでおそらくこちらですることはないと思われる。

6/12/2010

HITT

 初めてHITT(Heparin-induced thrombocytopenia and thrombosis)とおぼしき症例にあたった。やや非典型的なプレゼンテーションであるが、いまのところPF4抗体は陽性(serotonin release assayは結果待ちだが)で、塞栓症を合併しているのでおそらくHITTであろう。巨大なskin necrosisを併発しており、当初はwarfarin-induced skin necrosisを疑われたが、これもHITTの一症状とみられる。この病院に運ばれるまでの処置で、いくつか適切でないと思われるものがあり、患者さんの重症度とあわせ、人災の面があると思うとやり切れない。とはいえargatrobanで治療して、回復を祈るばかりだ。血液内科の先生も併診しており、この症例はlupus anticoagulantを合併している可能性があるとのこと。その検査結果を待っている。

Perseveration

 Non-convulsant status epilepticus(脳内はけいれん状態だが身体は動いていない)の患者さんを診た。脳波検査をしてわかるまでの数日間、何がおきているのかさっぱりだった。というのも患者さんは、聞かれた質問に対して5-10秒だまったあと答える(「どこにいますか?」「…病院」)ものの、その後数分のあいだは、何を訊いても同じことを反復して答え続ける(「名前はなんですか?」「…病院」)。これは英語でperseveration(保続)という。CT、MRI、脳脊髄液検査はいずれも異常なく、脳波でやっと判った。神経内科レジデントによれば、保続はnon-convulsant status epilepticusの一症状らしい。つぎの質問は、「なぜ患者さんがけいれんしなければならないのか」である。いまのところtoxic metabolic encephalopathy、あるいはlimbic encephalopathyが疑われる。