10/26/2010

prank

 ハロウィーンも近づき、先日は友人の家に遊びに行ったらそこの人達がみな変装していた。その友人はいま別の病院で働いているのだが、そこの同僚で当直のため来られなかった先生のために、パーティの食事を持っていってあげるという。でも、ただ渡すのではつまらないので、ERの病室に潜んで患者のふりをして、その先生を呼び出し驚かせようということになった。
 というわけで友人は変装したまま車に乗った。信号待ちのときなど隣レーンの人が驚いてみていた。病院の玄関からERに向かい、病室へ。その先生と面識のない私が患者の家族、もう一人が患者役ということになった。精神科救急用の部屋なので殺風景で、天井の隅にはカメラモニターがついている。(患者の家族として問診に立ち会うのは初めてだな)と思いながらストーリーを考える。
 ほどなく先生がやってきて、私は臨場感を出すためにさも恐れおののいた様子で「妹の様子が変なんです…さっきまでパーティーしていたんですが…人の声がするって言うんです…怖い…怖いよ!…これって変ですよね?…僕おかしいですか!?」と、どもりながら椅子から立ち上がり先生に迫る。しかも患者役はそのあいだずっと顔を毛布で隠しベッドで横たわっているのだ。
 先生は動揺しつつ、ベッドに近づき患者役に声をかけた瞬間に彼女が「お前をたべちゃうぞーガオー!」と飛び起き先生が「ヒー!」となったところで皆が部屋に入ってきてドッキリ終了となった。そのあとは改めて自己紹介して、食べ物を渡して戻って来て、映画"Zombieland"(2009)を観て真夜中過ぎに帰って来た。ハロウィーンのよい思い出になった。

10/22/2010

article

 悪性疾患の患者に対する静脈血栓症予防にはワーファリンよりも低分子量へパリンのほうが有効であるというのは、話には聞いていたし、今の病院でもそのように診療しているが、誰もその根拠を教えてくれなかった。こないだ大学病院でoncologyのfacultyをしておられる日本人の先生に訊いたら一発でNew England Journal of Medicineの2003年の論文があることを教えてくれた。私的にお世話になっている先生から、このように仕事面で教わるのも嬉しいものだ。そのうち自分からも発信できるようになるといい。

10/19/2010

Migraine-associated vertigo

 Headacheとは比喩で「悩みの種」という意味でよく使われる。患者さんにとってはなんとも厄介で「頭の痛い」事態だ。頭痛の特徴は、ほとんどのケースで症状から臨床的に診断することだ。そんなわけで注意深い問診がカギであるが、今日も一人英語が話せない患者さんが頭痛で来院し、通訳してくれる家族を頼りに詳しく情報をあつめたらどうやらMigraine-associated vertigo(MAV)っぽい感じだ。偏頭痛らしい頭痛の症状に加え、頭痛が始まると同時に目まいと耳鳴りがするのだという。Dix-Hallpike試験が陽性だったが、MAVはBPPV(良性発作性頭位性眩暈)を合併することがままあるという。

10/05/2010

life support

 ICU勤務では、患者さんが意識不明で話すこともできず管につながれて、反応といえばモニター(心電図などバイタルサインを持続的に反映するパネル)がピコピコするだけという状況で、看護師さんに言われるままやれ「(患者さんの)血圧が高いからなんとかしろ」「あばれているから鎮静剤をオーダーしろ」「動脈ラインが抜けたから新しいのを入れろ」だの言われて応需診療する日々だった。一部だけをみて全体をみないような、倦んだ気持ちになった。さらに倦むと、患者さんより看護師さんを治療しているような憂鬱な気持になった。
 ICUでは「感染症なら抗生剤」、「悪性腫瘍なら抗ガン剤」という根本的治療だけでは済まず、患者さんの循環・呼吸・栄養・腎機能・その他をどれだけサポートできるかという話になってくる。サポートという言葉は日本語の「生命維持(装置)」と置き換えていい。たとえば肺炎にしても、人工呼吸器はサポートであって根本的治療ではない。患者さんの状態が自力の呼吸では酸素を十分に取り込めないほど悪いので、人工呼吸器で助けてあげるのだが、あくまで時間稼ぎでありその間に肺炎が良くならなければ仕方ない。
 人工呼吸器のサポートでも不十分なら、腹臥位にしたり(roto-prone bedという患者さんを回転させる特別のベッドがある)、ECMO(人工肺、血液を取り出し膜を通して酸素化して再び送り返す機械)につないだりする。先月も、重症レジオネラ肺炎に横紋筋融解を合併した症例があって、ECMO導入になった(ので外科ICUに移ってしまった)が、時間稼ぎの間に肺が回復してくれればよいと思う。心臓についても同じように各種サポートがあり、腎臓についても透析(通常透析、持続透析)などサポートがあるが、あくまでサポート、あるいは代替手段である。
 もちろんサポートの仕方次第で患者さんの救命率は上がる。いろいろな研究や文献により、酸素濃度はどう維持するとよい、人工呼吸器はこう使うとよい、貧血はこのレベルで治療するとよい、血圧低下はこの薬で対応すればよく、治療の指標はこれを使うとよい、栄養はどの方式で与えるのがよい、といった色々なことが分かってきている。正しいサポートの仕方を学ぶことが、ICU診療で最も大事なことは言うまでもない。私もその理解により今までよりは気持的に希望を持って瀕死の患者さんを助けられるようになったし、そう簡単にはあきらめずどこまでもサポートしてきた。
 しかし「サポートもいいけど、いま何が起きていてどんな根本的治療がありえるの?それがあるならいいけれど、ないならサポートだけしてどうなるの?」という問いもとても大事である。そして残念ながらpoint of no return、このプロセスは不可逆的でありいかなるサポートもそれを戻すことはできない、という時がある。そこからは治療の目的を根治から患者さんの苦を除くことにシフトすることも提案しなければならない。

case review

 先月のICU勤務中に診た興味深い症例を、いま見直している。腎膵移植後に免疫抑制剤(alemtuzmab、抗CD52モノクローナル抗体とtacrolimus)を導入されてから重度の自己免疫溶血性貧血を発症した患者さんで、ステロイド療法に不応性でヘモグロビン濃度は一時期3.5g/dlまで下がった。

 免疫グロブリン、rituximab(B細胞をターゲットにした抗CD20モノクローナル抗体)、bortezomib(プロテアソーム阻害剤で主に多発性骨髄腫に用いられる)、血漿交換を行ってやっと反応した。無事退院できてほっとしている。

 この症例から、自己免疫溶血性貧血について、その他の溶血性貧血について、免疫阻害剤について、免疫学の基礎知識について、生物学的製剤について、など幅広く学ぼうと思う。一つ一つの項目について学ぶうちに、そこから派生した事項まで学ぶこともできる。来年からのトレーニングでは、腎移植や腎膵移植の患者さんを沢山診るのでその導入ともいえそうだ。

10/03/2010

rain on someone's parade

 Don't rain on my parade(私のパレードに雨を降らせるな)、という表現にも出会った。MICUの患者さんを次々に転床・転院させようという話をしていたときに「この患者さんは今朝から血圧が下がってます」とか「あの患者さんは保険がないので転院には時間がかかります」とか指摘されたフェローが言っていた。つまり、盛り上がった気分に水を差すとか、いい気分を台無しにするとかいう意味。