11/24/2015

Hemospray

 症例から学べるだけ学びたいから、消化管出血の止血方法について調べていた。というのもこないだ直腸潰瘍症例でみたクリッピングに満足できなかったからである。

 そしたら、Cook Medical社のHemosprayTM(TMは商標のこと)がみつかった。Cook社秘伝の(proprietary)キトサンと鉱物のmixtureを消化管壁に散布すると吸水して固まり、それが止血の物理的なバリアになるだけでなく、凝固や血小板凝集能も高めるらしい。腫瘍からの出血など触りたくない場合や、出血箇所がはっきりしない場合などにバーっと撒けばよいから優れているらしい。YouTubeで検索したら噴いていた出血が止まった動画がいくつもでてきた。

 しかしこのデバイスはアメリカでも日本でも認可されていない(Googleで「ヘモスプレー」と日本語で入れても一件も出てこない)。Cook Medical社自体はアメリカインディアナ州にあるのに不思議だ。北米州ではカナダとメキシコ、アジアでは香港、シンガポールなどで認可されている。




11/22/2015

End-of-life Consultation

 米CMS(The Centers for Medicare & Medicaid Services)が2016年1月1日からの支払い規則を最終決定して、その変更点のひとつにEnd-of-life consultationへの支払いが含まれることになった。最初の30分で$86(病院だと$80)、それ以降の30分はup to $75となっている。このインセンティブがあれば時間をとって患者さんや家族の意思が尊重されるようになり、意思に反した過剰な検査・治療が防げて医療費を抑制できるということを狙っていると思われる。ついでに the End-Stage Renal Disease Quality Incentive Programも最終決定されて、透析ユニットで貧血や感染症や各種安全が一定基準を保てない場合に支払い額が減らされるようになる。


11/21/2015

Gush of Blood

 長期臥床ICU患者が突然に大量新鮮下血してショックになったら、輸液でも輸血でも昇圧剤でも放り込んでとにかく蘇生するのはもちろんだが、一刻も早く出血を止めなければならない。ここでただ消化器内科医を呼んだのでは甘い。たしかに激しい上部消化管出血が下から鮮血ででてくることはあるけど、患者さんの病歴と経過を知る者としてはこの出血が直腸潰瘍によるものと確信されるのだから(経鼻胃管から何も引けないし)、型どおりに上部内視鏡をして直腸からダバダバ何リットルでも出血するにまかせるのではなく、「直腸潰瘍ですから上部ではなく一刻も早く下部内視鏡をして止めてください」と説得しなければいけない。もし嫌だといわれたらIVRに掛け合うか、あるいは直腸に挿入して圧迫止血するチクワ状のSPONGOSTAN®を使うか(8cmしかないから届かないかもしれないけど)して、とにかく即刻出血を止めて失血を防がないといけない。ICUは全身管理が勉強になるのも一面だけど、やっぱりこういうひとつの判断で予後が大きく変わるような緊急事態にたくさん遭遇して即応判断力をつけることも大切だなと思う。





11/18/2015

Going the extra mile

 腰痛と「Mタンパク(とだけ書いてある)」と貧血と進行する腎障害がある症例が紹介されてきたら、骨髄腫を疑って一刻も早く異常タンパクを減少させたい(高Ca血症や体液減少や敗血症などがあればそれも治療しなければならないが)。骨髄腫における腎障害はmedical emergencyなんて書いてる論文もあるが(Bone Marrow Transplantation 2011 46 771)、各種検査が外注で時間のかかる市中病院ではけっこう間延びする。とりあえずその「Mタンパク」とやらの詳細な情報を前医に取り寄せたいが、研修医が問い合わせて送ってもらったFAXには「検出」としか書いてない。で、そこで止まっている。うちでSIFEを出しなおしているが、結果が出るのに一週間はかかる。あーもう見てられない、と私が前医に電話したらあっさり教えてくれた。
 つぎは骨髄穿刺/生検だが、これもやったはいいが外注のレポートが来るまでには時間がかかる。そんなに待ってられないなー、スメアのGM染色を自分で見れば形質細胞くらいわかるんじゃない?というわけで午後3時にした骨髄穿刺/生検のスメアがGM染色されているか午後4時に検査室に電話したら明日やる予定だという。「今日染めたら残業になりますか?」と聞いたら「いや五分くらいで染まるし大丈夫ですよ」というのでお願いして、例のすごい検査室の方にざーっと全視野をスキャンしてもらい形質細胞を確認できた(細胞数カウントまではしないけど)。
 ここまでで、入院して24時間。腎生検の予定も組んだ。私ならこの時点で少なくともbortezomibくらいは始めてしまうが、まあそれはこの間不在だった血液内科医の先生が来られて考えられることだ。私は血液内科医でもないし、そもそもこの症例は私のチームではないのだけど、やっぱり腎臓と患者さんを助けたいし、こういうふうに詰めの甘いところを詰めたりいまできることから行動したりするとやりがいを感じる。どうしたらこういう積極的な働き方というか態度を教えられるか考えている。