"It is easier to act your way into a new way of thinking than think your way into a new way of acting."とはJerry SterninがMonique Sternin、Richard Pascaleと一緒に書いたThe power of positive deviance(2010年、ポジティブな逸脱者、未訳、Dr. Atul Gawandeがforewordを書いている)に出てくる言葉だ。昔からの慣習や文化、固定観念などを変えるには行動から変えるのがよい、のを例を挙げて示した本だ。
Ann Int Med 2016 164 566は、回診の最後に"Do you have any questions?"という時には(please don't)と思っているし、たとえ思っていなくても患者さんにはそのように伝わることから、これからは"What questions do you have for me?"と聞くようにしよう、と決めたUCSFの先生のお話だった。
わたしもこの違いを意識していて、とくに病状説明の時に相手の心象や聞き足りないことなどを引き出したい時には「ここまでお聞きになっていかがですか?」「何か聞いておきたいこととかお感じなっていることとかいかがですか?」と無理やりopen-endedにして(たぶん日本語としてはおかしい)聞き方をしている。
そして待つ。するとだいたい何か答えてくれる。何がわからないかわからない、という一言でもそこから会話を広げてお互いの理解を深めることができる。日本では病状説明は昔ムンテラ(mouth therapyを意味する和製ドイツ語)といい医者からの一方通行でよかったが、いまはIC(informed consent)と言う。つまり患者家族が状況を理解して同意することを確認するのがゴールである。
このエッセイが言いたいことは無意識に使っている言葉が文化を作っていて、それをちょっと変えるだけで文化を変えることができるということだ。筆者は他にmorning reportでチーフレジデントに"What studies do you want to order?"(変わった検査をたくさん挙げて)という代わりに"How will that test change your management?"(それをやってマネジメントはどう変わるの)と聞かせるようにしたという。
あと病室を出るときに"Good-bye"や"I'll come back and see you again later"(私もこれは嘘なこともあると思ってきた)の代わりに"Thank you"というようにしたという。これはちょっと言い慣れない。家族に病状説明するときには「お父様(お母様)を診させてくださってありがとうございます」と言ったことはあるが。ただそれこそ冒頭の引用のように、言い続けていると「診させてくれてありがとう」という気持ちや考え方が定着してくるのかもしれない。