あれからいろんな先生が書くお手紙をみてきたが、そのなかで「紹介礼状」というのが心に残っている。患者さまの退院前、かかりつけの先生に「Aに対してX、Bに対してY…、いたしました。退院後は、Zなどされてはいかがかと思います」というお手紙を書いたお返事だ。抜粋するとこんな内容だった。
いつも大変お世話になっております。X日付けにてA様の情報提供書をいただきました。このたびはご丁寧な診療、情報提供書、ご対応、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
お手紙には、コストがとれるものととれないものがある。「今後の治療をよろしくおねがいします」というお手紙(たとえば、私が書いた診療情報提供書)はコストがとれる。「ご紹介ありがとうございます」というお返事(たとえば、私がいただいた紹介礼状)は、コストはとれない。無償の行為をうけとったわけだ。
でも、こういう心遣いはじつはちゃんとお金になると思う。紹介されたときに「ご紹介ありがとうございました」と書けば、受け取ったほうはうれしいし、「また、あそこに紹介しよう」と思うかもしれないからだ。そのために時間をかけすぎては生産性がさがるけれど、簡単でも気持ちが伝わるように書けばいいと思う。
補遺1:他科依頼(併診願い)とそのお返事
情提文例集(情提だけじゃないから「お手紙集」)に、他科依頼がなかった。というのも、米国には他科依頼というお手紙がないからだ。コンサルト・オーダーのコメントに腎臓なら「AKI Cr 2.0」とか書くだけで済む。詳しくは電話するか、会ってお話するかだ。文例を追加しよう。
【依頼】お世話になっております。ご紹介いたしますAさまは[既往]の既往ある[年齢][性別]で、
①[入院日]より[入院病名]で入院しておられます。
②[自科主病名]で当科外来におかかりです。
(が、)[いつ][どんな][相談したい問題]を認めました。[相談する科にとって重要な追加事項]はX、Y、Zです。[相談したいこと(診察、検査、治療、意見)]につきご相談したく貴科にご紹介もうしあげる次第です。お忙しいところおそれいりますが、ご高診ご加療のほどよろしくお願いいたします。
【お返事】お世話になっております、Aさまをご紹介ありがとうございます。拝見させていただき、(ご指摘のように)[診察で得た病歴、所見、検査結果など]を認め、[診断、アセスメント]と考えます。
①[検査計画]させていただくことにいたしました。
②[治療のレコメンデーション]するのがよいと考えます。
③[専門的な治療]の適応と考えます。
④[専門的な治療]させていただきました。
→[検査・治療日程]などご相談させていただければ幸いです。
→[フォローアップ計画]させていただければ幸いです。
ご不明な点やご質問があれば遠慮なくおたずねください。重ねましてご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
他科依頼をかいても返事を書いてもコストは取れない。入院中に他科依頼を受けて診察しても、検査しても、処方しても、DPCなら包括にふくまれる*。要は、タダ働きな場合もあるということだ。でも患者さま(と困ったあなた)の役に立ちたいと思って忙しくても相談にのってくれる、相手の先生に感謝したい。
*注:おおきな手技、退院時処方をのぞく。また、入院中いろいろ「がんばっている」病院には入院費に係数が上乗せされる仕組みがある(係数は毎年更新)。