11/30/2017

忘れられない一言 44

 外来にいれば、いろんな患者さんがやってくる。同じ年齢でも、元気な人もそうでない人もいる。元気が溢れてでている人もいる。そんな人に「お元気ですね」と水を向けると、こんな答えが返ってきた。

たくさん苦労したんだから、長生きしないと

 何事も受け止め方次第だなと思う。苦労したら長生きできないような気もする。でもそうではなくて、苦労したぶんよい報いがあるということだ。こういう考え方でいると、長生きできそうだ。



 

9/19/2017

忘れられない一言 43

 朝にEメールボックスの片隅にアナルズの最新号目次が届いていた。それをみて、ひさびさにOn Being A Doctor(Ann Intern Med 2017 167 444)を読んだ。人々の人生や社会に影響を及ぼしていないようでも、及ぼしているんだなと実感する心温まるエピソードだった。こういう話を読むと、医師のやりがいについて再認識できる。

 お酒をやめられずに肝硬変で苦しむ患者さんと、ERで同時にみた入院の一人として一瞬関わっただけだけれど、「(お酒をやめられず身を持ち崩したら)あなたの子供達が心配です」という一言と視線で、やめたというお話。そのときベッドサイドにいた息子も、そのことがあってから人を助けたいと思うようになり医療職についた。

 読んでから病棟にいくと、昨夜入院した患者さんに両手を合わせられ感謝された。「ゆうべは言葉を出したくても出てこなくてもどかしかった(がいまは話ができる)」と。家族にも感謝された。異変に気づいた家族から正確な病歴を取れたのが大きかった。行きがかりで診ることになった方で、彼らの話に耳を傾けなければ、ただしい診断には至らなかっただろう。論文に共感した。

 論文は1946年のクリスマス映画“It's a wonderful life”を引用している。天使クラレンスが、思い詰めた主人公ジョージに、自分が居なかったら世界がどうなっているかをみせる。クラレンスはそれを、グレイト・ギフトと呼ぶ。そうは感じられなくても、ひとは生きていることで多くの人達に影響を及ぼしている。

 天使に会わなくてもそれは感じられるはずだ、こんなふうに。あるいは、天使がみせてくれているのかもしれないが。




 

8/30/2017

忘れられない一言 42

 毎朝読んでいるアプリで、こんなクオートがあった。




 画像が開けない場合もあるかもしれないからテキストにすると、Nothing contributes so much to tranquilise the mind as a steady purpose - a point on which the soul may fix its intellectual eye。一貫した、ゆるがない目的ほど心を落ち着かせるものはない。魂の知的な目が、その一点に固定されるから。というような意味か。

 この言葉は、フランケンシュタインを書きSF小説家の祖とされるメアリ・シェリーのもの。夫は詩人のパーシー・B・シェリーで、ふたりともウィキペディアでみるだけでも波乱万丈な人生だった。それでも、ゆるがない目的があれば心を落ち着かせることができた。

 ゆるがない目的、とは?単数形だから、ひとつだ。彼女の場合は、ものを書くことだったのかなと思う。私にとっては、学んでそれを書き共有することだと思う。「学ぶ」「書く」「共有する」じゃあ三つもあるけれど、書くというのは、そういうことじゃないかと思う。これからも、書き続けたい。


8/21/2017

忘れられない一言 41

 壁に打ち込まれたたくさんの石に手足をひっかけて上っていくだけなら、誰もできる。実際には、石が色分けされて、同じ色の石しかつかまれない。ゴールも、壁の上にただ手をつけばよいわけじゃなくて、同じ色の石にたどりつかないといけない。

 せっかく同じ色の石をつなぐようにのぼっていっても、最後のところで同じ色の石がとどく範囲になければ、残念だが失格になる。

 という話を、ボルダリングをする学生さんとお昼ごはんをたべながらお話した。将来について話していた時でもあり、キャリアも足元を固めて一歩一歩進んでいくボルダリングに通じるなと思ったから。すると、学生さんから「手足が長ければ、道はひらける。」という一言がとびだした。

 少し方向がずれても、手足がながければ、進むべき方向に同じ色の石が見つかりやすい。そうすれば、同じ色の石をたどって進みたい道に進むこともできやすいだろう。とても示唆的なことばだな、と思った。次の一歩をふみだすのに、手足(つまり心のアンテナや交友範囲、知識や技術などのことだろうが)は長いほうがいい。

 そうすれば、黄色いレンガの道(図、オズの魔法使いより)を歩いていく助けになるだろう。学生さんも、きっと大丈夫と安心した。




 

  

 

7/31/2017

レシート幾何学 101

 以前から素数に関心を持っていたが、本屋さんで『素数姫の素数入門』(「素数に恋する女」製作委員会)という本があるのをみつけ楽しく読んでいる。そのなかにスタニスワフ・ウラムという数学者が、学会でほかの発表が退屈だったため手元のメモ用紙に落書きしていて「ウラムのらせん」をみつけたというエピソードがあった。

 きょうは、それに触発されて書いている。

 通勤電車のなかで、胸ポケットに入っていたレシートをいじっていた。下図の長方形をレシートとして、AとCをくっつけるように折る。




 そして開く。




 すると、A・P2・C・P1というひし形ができる。




 これだけでも感動したが、AとCをつけるように折らずにP1、P2の位置を決めることはできないか?という疑問がうまれた。さいしょは長方形の長い辺と短い辺の2変数で表そうとしたが複雑そうなので、短い辺を1、長い辺をx、求めたい長さをyにしてみた。




すると求めたい長さyは、三角形ABP1でピタゴラスの定理をつかえば求められる。




 得られた二次方程式を、解いてみる。




 y = 1/2 ( x - 1/x )。ひし形らしい、対照的で簡潔で美しい式。きっと、何百年、あるいは、何千年も前に発見されているだろう。名前もあるかもしれない。でも独力でたどりついたのはうれしいし、作業に没頭するのは楽しい。学ぶ楽しみを、続けて生きたい(「レシート幾何学」なんて本になるかも;写真はこちらから)。






 




 

 

7/21/2017

Livin' On A Prayer

 PK対決でPKを決めるのには、フィジカルな能力もさることながら、精神力がおおきいのだろうなと思う。長谷部誠選手が「心を整える。」で書いているのも、そういう内容なのだろう。

 医療で「うまくいきますように」と医療者が神頼みしたら、危なっかしいだろうか。実力や経験がないのに「神様がついているから大丈夫」ではこまるけれど、実力や経験があっても、自分のベストの力がだせるようコンディションを保つのにお祈りしても怒られないだろう。

 それでも不測の事態とか、困難なケースというのはあるし、そういうのもふくめて「うまくいきますように」と時間をとってお祈りしても、いいと思う。いくら完璧な手術をしても、患者さんが助からなければ残念すぎる。

 そんなわけで、ロッカールームで術衣に着替える時にお祈りしてみた。

 うまくいってよかった。





 

6/26/2017

忘れられない一言 40

 忘れられない一言も、ついに40回を迎えた。途中は本や論文から見つけた一言もあるが、いまでも忘れない大事な一言だ。

 40回目は、学生さんとのやり取り。緩和ケアを見学している彼に、見学した印象で、どんな特徴があるか聞くとこう返ってきた。

患者さんや家族の思いや考えを、否定せずに傾聴するのが他の科とちがうと思いました。
否定しないのは、技術だ。賛成するとか、言いなりになるとかじゃなく「そうだったんですね」と受け止めてあげる。夫婦円満の秘訣であり、営業のキホンであり、医療に限った話じゃない(教育でも使われる例はこちら)。

 まして緩和ケアだけに限った話じゃないから、身に着けたいものだ。



 

6/23/2017

忘れられない一言 39

 患者さんのプライバシーを守るのが難しい環境というのは、ある。たとえば病室に複数の患者さんがいるとき。また、隣のベッドにも患者さんが横になっている透析クリニック。隣の人に聞こえないようにするにはどうすればいいか?

 声のトーンとボリュームを落とすこと。半年くらい前、患者さんに「先生の声が大きいから、頭が痛い…」といわれるまで気づかなかったのは反省だ。でもそれからは、心得ている。耳が遠い人には、耳元で話すようにしている。

 落ち着いた、ゆっくりした、堅実な口調。それには、癒しの効果と説得力があると感じる。パブリック・スピーキングの基本だ。触れる手、選ぶ言葉、みつめる眼差しも、治療の一部。やり方次第で侵襲的にもなるから、使いようだ。






 


6/21/2017

忘れられない一言 38

 17時33分、上司の先生が電話をくださった。17時ころにやってきた患者さんが入院するので、明日から診てほしいと。

 それじゃ、と電話を切ろうとされたので、あわてて

「今日やっておくことはありますか?」

 と聞くと

先生は帰る時間だから今日は俺がやっとくから

 とおっしゃった。さらっと、なかなか言えることじゃないと思う。



信じぬくこと

 数ヶ月の入院を経て、なんども状態が悪くて希望を失いそうなときがあって、それでも元気で退院される方をみると心が動かされる。

 そういう方から得られる教訓は、入院が長くなった方を元気にするのに活かせるかもしれないから自分なりに感じたことをリストにしてみる。

 退院先が自宅でないこともあるが、それでも自宅を最終的なゴールにしている方が多い気がする。

 そして、おうちに帰れないと嫌だ!と言い張るのではなく、いつかはおうちに帰ります、と静かに信じて強く願っている人が多い気がする。

 信じるといえば、信仰、つまりfaithをもつ方も多い印象だ。宗教を信じると、治療者・家族・患者といった立場が神さまのしたで横並びになる。

 怒りや悲しみを神さまにゆだねると、心が落ち着くかもしれない。すべてを人間相手に解決してもらおうと思っても、人間は完璧じゃないから。

 とにかく、信じる、というのがカギかもしれない。大事MANブラザーズ『それが大事』(1991年)にあげられた、

・負けないこと
・投げ出さないこと
・逃げ出さないこと
・信じぬくこと

 という「ダメになりそうなときに大事な4つの態度」にも挙げられている。妄信、盲信はいけないけれど、見えないものを信じられるかどうかが差を分けることは、ある。
  
 音楽療法とかいうけど(ここにも書いたけど)、音楽療法っていうのはご老人の耳に心地よい民謡を流せばいいってもんじゃない。そのときに必要な効果を期待して選曲したほがいい。だからたとえば「それが大事」「TOMORROW」「負けないで」なんか、希望をなくしそうな闘病生活には有効だと思う。





5/14/2017

お引っ越ししました(^o^)

 以前にも触れたつもりではあったが、腎臓内科関係の内容はお引越しした。お引っ越し先は、私だけのブログではない。3人(2019年5月現在)で書いている。だから、僕たちのキセキ。

 お引越し先は、こちら

 検索するときは「僕たちのキセキ」と入れれば出ます。

 腎臓内科以外にも、人工子宮(フィラデルフィア小児病院の研究、写真はEconomist誌)とか、話題は事欠かない。細々とでも、こちらのブログも続ける予定だ。