6/26/2017

忘れられない一言 40

 忘れられない一言も、ついに40回を迎えた。途中は本や論文から見つけた一言もあるが、いまでも忘れない大事な一言だ。

 40回目は、学生さんとのやり取り。緩和ケアを見学している彼に、見学した印象で、どんな特徴があるか聞くとこう返ってきた。

患者さんや家族の思いや考えを、否定せずに傾聴するのが他の科とちがうと思いました。
否定しないのは、技術だ。賛成するとか、言いなりになるとかじゃなく「そうだったんですね」と受け止めてあげる。夫婦円満の秘訣であり、営業のキホンであり、医療に限った話じゃない(教育でも使われる例はこちら)。

 まして緩和ケアだけに限った話じゃないから、身に着けたいものだ。



 

6/23/2017

忘れられない一言 39

 患者さんのプライバシーを守るのが難しい環境というのは、ある。たとえば病室に複数の患者さんがいるとき。また、隣のベッドにも患者さんが横になっている透析クリニック。隣の人に聞こえないようにするにはどうすればいいか?

 声のトーンとボリュームを落とすこと。半年くらい前、患者さんに「先生の声が大きいから、頭が痛い…」といわれるまで気づかなかったのは反省だ。でもそれからは、心得ている。耳が遠い人には、耳元で話すようにしている。

 落ち着いた、ゆっくりした、堅実な口調。それには、癒しの効果と説得力があると感じる。パブリック・スピーキングの基本だ。触れる手、選ぶ言葉、みつめる眼差しも、治療の一部。やり方次第で侵襲的にもなるから、使いようだ。






 


6/21/2017

忘れられない一言 38

 17時33分、上司の先生が電話をくださった。17時ころにやってきた患者さんが入院するので、明日から診てほしいと。

 それじゃ、と電話を切ろうとされたので、あわてて

「今日やっておくことはありますか?」

 と聞くと

先生は帰る時間だから今日は俺がやっとくから

 とおっしゃった。さらっと、なかなか言えることじゃないと思う。



信じぬくこと

 数ヶ月の入院を経て、なんども状態が悪くて希望を失いそうなときがあって、それでも元気で退院される方をみると心が動かされる。

 そういう方から得られる教訓は、入院が長くなった方を元気にするのに活かせるかもしれないから自分なりに感じたことをリストにしてみる。

 退院先が自宅でないこともあるが、それでも自宅を最終的なゴールにしている方が多い気がする。

 そして、おうちに帰れないと嫌だ!と言い張るのではなく、いつかはおうちに帰ります、と静かに信じて強く願っている人が多い気がする。

 信じるといえば、信仰、つまりfaithをもつ方も多い印象だ。宗教を信じると、治療者・家族・患者といった立場が神さまのしたで横並びになる。

 怒りや悲しみを神さまにゆだねると、心が落ち着くかもしれない。すべてを人間相手に解決してもらおうと思っても、人間は完璧じゃないから。

 とにかく、信じる、というのがカギかもしれない。大事MANブラザーズ『それが大事』(1991年)にあげられた、

・負けないこと
・投げ出さないこと
・逃げ出さないこと
・信じぬくこと

 という「ダメになりそうなときに大事な4つの態度」にも挙げられている。妄信、盲信はいけないけれど、見えないものを信じられるかどうかが差を分けることは、ある。
  
 音楽療法とかいうけど(ここにも書いたけど)、音楽療法っていうのはご老人の耳に心地よい民謡を流せばいいってもんじゃない。そのときに必要な効果を期待して選曲したほがいい。だからたとえば「それが大事」「TOMORROW」「負けないで」なんか、希望をなくしそうな闘病生活には有効だと思う。