2/11/2008

平静の心で

 驕るものは久しからず。信用も評判も、壊すのは簡単である。今日は病棟で看護師さんにまずく対応してしまい後味の悪い結果になった。いままでに私がそうした対応をしたことはなかったと看護師さん本人も言ってくれたが、この件を起こした今、ちょっと早期には修復は難しい状況だ。
 最近、自分の考えに自信をもったり、やはり自分のやってきたことや努めていることは正しかったと感じる機会があって、自分をたかめに評価する気分がづついた。しかし、その反面相手に攻撃的になったり、声が不要に大きくなっていたように思う。気づいてよかった、思い上がりもいいところである。
 おとといの救急外来では、一見よくある病気に見える患者さんから丁寧に病歴を取って、なにかおかしいと感じることができた。結果、まれだが命に関わる病気と分かり手術になった。力はついているはずだ、それを感じるのはよい。でもdark sideは避けなければならない。
 もうひとつ。今回、抽象すれば「相手が求めるのとまったく正反対の攻撃的な受け答えをした(自分が頼りないと言われたように感じたため)のでショックを与えた」のだが、これは私生活においてもあってはならないことだ。感情をコントロールしなければならない。

2/07/2008

遺伝子の世紀

 よくある病気へのかかりやすさ(遺伝子多型)を調べる大規模な研究も沢山されているが、稀な病気の原因遺伝子を調べて細胞生物学や病理学の解明につながることもある。今週の医学雑誌に後者の研究成果が載った。
 Hutchinson–Gilford Progeria症候群というきわめてまれな病気があり、患者さんは生後からどんどん老化して生殖年代まで生存することは稀である。このような病気は遺伝子の突然変異によって起こると考えられるが、果たしてLamin Aというタンパク質をcodeする遺伝子に突然変異がみつかった。
 これはアミノ酸配列を変えないが、mRNAのsplicingが異常におこるため結果的に異常タンパクができ、通常なら一旦細胞のなかの膜にはりついてから酵素により細胞質に放出されるはずが、膜からはなれずにたまってしまう。これによりとくに核膜が膨れてしまうのだという。
 それで何故老化のような症状が起こるのかはわかっていないが、高齢者の細胞にも同様の変化がみられるそうなので、老化のメカニズムに関係している可能性がある。老化を進める多くのもの(タバコ・加齢・ストレスなど)が細胞レベルで起こす共通の変化の一つなのだろう。
 稀な病気を研究して、すべての人に当てはまる原理が解明されたら面白いと著者はいう。これらの研究成果がゆくゆく明日の医療をかえてしまうかもしれない。白血病などでは、遺伝子の異常とがん発症メカニズムがかなり判明しており遺伝子検査をして「ある型」と分かればそれに固有な治療をする。

2/01/2008

多角的にみる

 来年度から担当を外れる患者さん(おおくは高齢者)たちに、外来でその旨お話しする。お別れの間際になって、患者さんがどんな生い立ちで、誰とどこに住んでいて、何に愉しみをもって暮らしているのかを話すようになった。時間の制約と、主訴と関係ない「無駄話」をすることの罪悪感がそうさせたのかもしれない。そんな話をするよりも、症状の話をよくきき病気の原因を考えろと。
 たしかに医者の仕事は話し相手ではない。医療者としての自覚を持つ意味でも自戒は必要である。しかし、患者さんの背景や、患者さんがどういう気持ちや理解でいるかを知らなければ治療もうまくいかないことが多い。もっと早くに訊いておけばよかったと思う。
 先日、米国で老年医学を学んだ先生からcomprehensive geriatric assessmentについて学んだ。physical health, mental health, function, social problemに大別して評価すべき項目を順に説明してもらった。このような系統的なリストが他業種間で共有されれば、外来診療が豊かで実効的になるであろう印象をもった。