2/07/2008

遺伝子の世紀

 よくある病気へのかかりやすさ(遺伝子多型)を調べる大規模な研究も沢山されているが、稀な病気の原因遺伝子を調べて細胞生物学や病理学の解明につながることもある。今週の医学雑誌に後者の研究成果が載った。
 Hutchinson–Gilford Progeria症候群というきわめてまれな病気があり、患者さんは生後からどんどん老化して生殖年代まで生存することは稀である。このような病気は遺伝子の突然変異によって起こると考えられるが、果たしてLamin Aというタンパク質をcodeする遺伝子に突然変異がみつかった。
 これはアミノ酸配列を変えないが、mRNAのsplicingが異常におこるため結果的に異常タンパクができ、通常なら一旦細胞のなかの膜にはりついてから酵素により細胞質に放出されるはずが、膜からはなれずにたまってしまう。これによりとくに核膜が膨れてしまうのだという。
 それで何故老化のような症状が起こるのかはわかっていないが、高齢者の細胞にも同様の変化がみられるそうなので、老化のメカニズムに関係している可能性がある。老化を進める多くのもの(タバコ・加齢・ストレスなど)が細胞レベルで起こす共通の変化の一つなのだろう。
 稀な病気を研究して、すべての人に当てはまる原理が解明されたら面白いと著者はいう。これらの研究成果がゆくゆく明日の医療をかえてしまうかもしれない。白血病などでは、遺伝子の異常とがん発症メカニズムがかなり判明しており遺伝子検査をして「ある型」と分かればそれに固有な治療をする。