先週は、うちの大学(内科)の医学教育を統括するボスの一人と話した。医学教育方面でキャリアを積む方法などを色々聞くことが出来て自分の中で「これだ」という感覚があった。リソースを色々紹介してくれたが、とりあえず最初の一歩として論文をいくつか読み始めた。
その一つが"The one-minute preceptor: shaping the teaching conversation"(Fam Med 2003, 35, 391-3)だ。これは忙しい外来で学習者をいかに効果的にpreceptするかというアプローチの一つを紹介したものだ。初出は1992年(J Am Broad Fam Pract 5, 419-24)で、2001年に有効性を示す論文もでたらしい(J Gen Intern Med 16, 620-624)。
これによれば、五つのステップ(microskills)を踏んで症例について議論せよという。それぞれ(1) get a commitment, (2) probe for supporting evidence, (3) teach general rules, (4) reinforce what was done right, and (5) correct mistakesだ。今思うと、レジデンシー時代に私の外来preceptorがこのテクニックをそのまま使っていた。
Get a commitmentとは、症例をプレゼンテーションした直後の学習者に、彼・彼女自身のアセスメントとプランをopen-ended questionで問うものだ。間違いや評価されることを恐れる人には"If I weren’t available, what would you do for this patient?"と言ってあげると助けになる場合があるという。
Probe for supporting evidenceとは、彼・彼女の思考プロセスとその根拠を探り、どこが正しくどこが間違えているかを見抜くことだ。まるで学習者を患者さんとして診ているかのようだが、その比較は正しい。Clinical teacherは患者さんと学習者の両方を診断しなければならないのだ。
Teach general rulesでは、学習者が一度に限られたことしか消化できないことを覚えておかねばならない。とくに新しいteacherは一症例で教えることを詰め込みすぎたり、自分が得意なことばかり教えたりしがちだから注意が必要だ。またここでは"rules"とあるように、単なる知識ではなく応用できる原理原則を教えるべきだ。
最後のフィードバックも、いきなり「君はここが良かったがここは直そう」などと始めては良くない。目標はあくまで彼・彼女が自己診断・自己学習できるようになることだからだ。"What did you learn from this case?"というopen-ended questionで始め、そのうえでフィードバックしさらにfurther readingをsuggestしよう。