H+/K+-ATPaseはαサブユニットが2種類あって、α1はgastric isoform(HKα1)、α2はcolonic isoform(HKα2)と呼ばれるがそれ以外にも存在して、腎臓では遠位ネフロン、とくに介在細胞で酸排泄(とK+再吸収)に関わっている。HKα1 H+/K+-ATPaseが極小濃度のSch-28080で阻害されることは古くから分かっていた(J Biol Chem 1987 262 2077)が、この薬は肝障害などあり胃酸分泌抑制に実用化されることはなかった。
しかし月日は流れ、H2ブロッカーがでて、PPIがでて、ついにSch-28080を修飾したH+/K+-ATPaseのK+ competitive acid blocker(CAB) がでた。まず韓国でrevaprazanが認可されて、ついで日本でvonoprazanが認可された。ドイツでlinaprazanが研究されたが効果がなく中断された。糖尿病、高血圧などと並んで胃薬は超巨大市場だから、やっぱり新薬研究は進んでいて(J Neurogastroenterol Motil 2014 20 6)、PPI徐方剤やPPI合剤、TLESR(Transient Lower Esophageal Sphincter Relaxation Reducers)などがあるようだ。
TLESRはGABA-B、mGlucR5、CB、CCK、5-HT4、ムスカリン受容体、オピオイド受容体などをターゲットにしているらしい。ところでCABはとても強力に胃酸を抑制するが、Clostoridium difficile腸炎だの入院中の誤嚥性肺炎だのガストリン産生によるカルシノイドだのといった長期の副作用が気になる(vonoprazanの動物データでは何百倍も神経内分泌腫瘍のリスクが上がるそうだが)ほかに、コモンな副作用に下痢があるそうだ。これが、HKα2をブロックすることによる大腸でのK+喪失に関係しているのか興味がある。