2/03/2016

それも大事、これも大事

 ICU、とくに内科ICUという所は原疾患を正しく診断し治療するまでのあいだ支持療法で時間を稼ぐ場所だから、初動で診断がまちがっていたり、現疾患の治療が遅れてしまっては「なにかをしているつもりでなにもしていない」ことになる。

 それは、たとえば「なおらない肺炎」の触れ込みで来ても、漫然と広域スペクトラム抗生剤を投与して待つのではなく、初療時にANCA関連血管炎や抗GBM病による肺胞出血の兆候を見逃さないで、自己抗体結果を待たずに血漿交換に踏み切る観察眼と勇気を持つということだ。そして、その結果を予見(免疫抑制、凝固異常など)しておかなければならない。

 またリンパ節生検結果待ちの悪性リンパ腫うたがいにともなう致死性自己免疫性溶血性貧血や急速に進行する臓器障害の人がいたら、外注の生検結果を漫然と待って輸血するのではなく、一日でもはやく化学療法が始められるように病理結果を問い合わせHE標本だけでもうちにあるなら見に行き、血液内科医の意見を得る(在院していなければ連絡する)ことが律速段階であり助かるための道である。化学療法の副作用も覚悟しておかなければならないが、元を断たなければ仕方ない。

 こんなとき、現場はとりあえず救命することでいっぱいいっぱいなので、手が余った人が分担してあげることも大事だなと思う。なにごともチームワーク。私が集中治療フェローシップをあんなに勧められたのにすすまなかったのは、生命維持のスペシャリストになるより重症疾患のただしい診断と治療ができる人になりたかったからだ。

 そういえば初期研修医時代に、救急搬送されてきた患者さんの救急対応でみんなのアドレナリンがあがっているあいだに、ひとりロビーで家族からながながと病歴をとって怒られたこともあった。