Lindy Hopとは1920年代のハーレムが発祥の、ジャズに載せた踊りだ。見たら分かるがかなり激しくアクロバティックで、こんなダンスが生まれ大流行したとは、Fitzgeraldが1920年代の米国をJazz Ageと名づけたのもうなずける。このあともCharleston、Boogie-Woogie、Jive、Jitterbug、Rock'n'Rollなど様々なダンスが産まれて現在に至る。
さて、米国内科学会誌で私が楽しみにしているコーナーOn Being a Doctorに、Leslie Cohen先生が書いたエッセー"Jitterbug"(Ann Int Med 2013 158 919)が載った。これは彼女がフォローしていた患者さんとの話だ。糖尿病と高血圧でフォローしていたが、病院に来ても待合室で元気なく座って、笑わず、話もゆっくりだ。うつ病や内因性の疾患をスクリーニングしたが陰性。
ある日彼女は、"What was the best job you ever had?"と聴いてみた。すると彼女は、若い頃にTimes Squareでダンサーをしていたこと、Pat Allenという芸名で、特別な衣装を着て人気を集めたこと、そして亡き夫であるダンスパートナーに出会ったことなどを話した。これらの思い出を話しながら、彼女がキラキラし始めた。
3ヵ月後の外来、彼女は待合室の患者さんを芸名で呼びかけると、それまで目を閉じて退屈そうに座っていたAllenさんは目をパチクリさせ、ニコッとした。そして、診察室でAllenさんのお気に入り、Glenn MillerのIn The Moodを踊った。それまで動きの遅かった患者さんは、機敏な動きで彼女をリードした。一分くらいして終わり、おじぎをして、それからお互い座り血液検査の結果、食事、薬について話し合った。
この話がimpact factor 16.7の米国内科学会誌で、original articlesやらsystematic reviewやらに混ざって載っているのはなぜだろうか。それは、この学会が医師として患者さんといかに関わるか、医師としてやっていくとはどういうことなのかを教えてくれる生の声をvalueしているだからだと思う。On Being a Doctorと他の記事、どちらがよりインパクトがあるか一概には言えない。