9/09/2020

トトロの教えてくれたこと

  『ふたつよいこと、さてないものよ』と喝破したのは河合隼雄先生(『こころの処方箋』、1992年)だが、同じことを『となりのトトロ』(映画公開は1988年)エンディング・テーマから教わった。

 ほかでもない、曲の最後に繰り返される「トットロ・トットーロ」のことである。下図のように、コードはメジャーからセブンス、セブンスからディミッシュト・セブンス、さらにマイナーへ移り変わる。



 
 最初のFメジャーだけなら、なんの心配もドラマもない。それがセブンスになり「おや?」と変化がうまれる。一つ目(1行目後半)のセブンスは歌詞がCで始まり長調風だが、二つ目(2行目前半)はB♭ではじまり短調を予感させる。

 そしてそこから、一陣の風のようにディミニッシュト・セブンスが吹き込み、Dマイナーへ。二行目はルート音(ベース音)もC→C♯→Dと半音階で進行し、森の気味悪さを暗示するかのようだ。そしてふたたび、1行目のFメジャーにもどる。

 このが繰り返される様子は、筆者にはまるでサインカーブのようにすら思える。また、このマイナーコードがあるからこそ、人生が味わい深くなるのかもしれないと思えてくる。少しの不安、少しの恐怖を乗り越えることによってである。


 同曲歌詞「もしも会えたなら、すてきな幸せがあなたに来るわ」ではないが、子供のときにだけ会えるはずのトトロに、はじめて会えたような気がした。ありがとう、トトロ(と久石譲さん!)。


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