大動脈弁逆流症(aortic regurgitation, AR)でみられるdiastolic rumblingは、Austin-Flint雑音とも呼ばれるがこれは拡張期に大動脈からの逆流が多くなると左心房からの血液の流入の邪魔をするために起こる。ARが重症になるほど、拡張期大動脈圧がさがり拡張期左室圧があがるので大動脈弁が早く開くようになり、雑音は短くなる。
Ashman's phenomenonとは、RR間隔が長い拍の次に急にRR間隔の短い拍がくる(たとえば心房細動などで)と、その拍のQRS波は右脚ブロックになることをいう。これは前拍の長いRRのせいで右脚はまだ不応期がにあるため(右脚の不応期のほうが左脚のそれより長い)。これはwide QRS complexだが上室(房室結節より上位)由来で、premature ventricular contractionではない。
心筋への慢性的なβ刺激は、β受容体のdown regulationを起こす。だからβ blockerが慢性心不全に有用である。またmilrinoneなどPDE阻害剤のよいところはβ受容体を介さずに心筋収縮力と血管拡張を起こすところにある。Flecanideの経口剤は、心房細動のリズムになるたび頓服する"out-of-pocket approach"で用いられることもあるが、これはstructural heart diseaseのある患者には有害である。
心室頻拍(ventricular tachycardia, VT)をATP(anti-tachycardia pacing)でbreakすることができる。これは、AICDによりVTの拍より速くペーシングすると、ペーシングのリズムがVTをentrainしてしまう。これは、entrainという語感から、走っている馬に乗っている人の横をそれより速い列車が通り過ぎ、ひょいっとその人を車内に引き入れ捕まえるようなイメージを想像する。クールなアイデアだ。
冠動脈の狭窄が有意かどうかを決めるのは、単なる狭窄割合ではなく、狭窄以遠の血管拡張能力(vasodilatory reserve)がどれだけ残っているかによる。まだ血管拡張能力が残っていれば、なんとか狭窄以遠に血流を確保することができる。その能力を使いきるのはだいたい狭窄が70%を越えたくらいのことが多いが、場合によりその限りではない。
若年患者で右心由来のVTをみたら、arrhythmogenic right ventricular dysplasia(ARVD)なる心奇形を考えなければならない。これは右室自由壁の心筋が線維や脂肪組織に置き換わる遺伝的異常である。右心由来のVTは、肢誘導のQRSが北西軸(本来あってはならない方向)で胸部誘導のQRSが左向きという特徴がある。