Serenity Prayerとは、「変えられないものを受け入れる静けさ、変わるべきものを変えていく勇気、そしてその二つを見分ける智恵を与えてください」という祈りだ。腎臓内科にいると、静けさ・勇気・智恵の重要性を痛感する。
たとえば急性腎不全でコンサルトを受けたら、原因を調べる。補液やら薬の中止やらで治せるなら治す。調べ尽くしてATN(急性尿細管壊死)と分かったら、たとえクレアチニンが上がり続けてもただ回復を待つしかない。
ICUではあらゆる生命維持治療が行われる。人工呼吸器、昇圧剤、IABP(大動脈内バルーンポンプ)、LVAD(左室補助デバイス)、TAH(完全人工心臓)、ECMO(体外膜酸素化装置)…。腎臓内科医も一緒になってCRRT(持続透析)をやる。「やれることは全部やってる、だから透析も」と呼ばれるわけだ。
コンサルタントは困った医師を助けるのが仕事だから、頑張って助けようとしている主治医の力になってあげたい。でも翌日まで持たないと分かっている患者さんに透析を施すことが果たして妥当なのか。昇圧剤下で心停止を繰り返すpH 6.9の乳酸アシドーシスと高K血症、すでに高用量のCVVHDF中なものを「何とかならないか」と言われても、どうしようもない。
静けさ…戦場のような病院で、静けさ…。静けさ…?オスラー先生は平静の心を持てと言った。マルクスアウレリウス帝は崖のように静かに聳えて荒波をおさめよと言った。恥ずかしながら、最近色々あって忘れていた。誰だっていつだって色々あるんだ、そんな時にも静けさを忘れないようにしなければ。