先日、午後の休憩時間に後輩の先生たちと話していたらチェスの話になった。私はチェスのルールはいままで習う機会がなかったので、親切な彼らが駒の動き方と基本的なルールを教えてくれた。駒にはKing、Queen、Rook(塔)x2、Knight(馬)x2、Bishop(帽子)x2、Pawn(歩)x8がある。8x8のチェッカーボードにPawnが前列(2nd Rank)、それ以外は後列(1st Rank)に並ぶ。両端からRook、Knight、Bishopの順(将棋で言う香車、桂馬、銀)で、最内側のふたつのうちQueenは駒と同じ(白なら白い所)、Kingはその隣に置く。
動きは、将棋と同じものと違うものがある。Kingは王将、Queenは飛車と角を合わせた動き、Rookは飛車、Bishopは角。Knightは桂馬に似ているが、前だけでなく八方すべてにL字で移動できるので将棋の積りでいると痛い目に遭う。またPawnは歩に似ているが、最初の動きは二個進むことができたり、正面の駒は取れず左右前の駒しか取れないなど違いがある。Pawnが8th rank(ボードの最奥)まで攻め込むと、promotionといって「と金」のように他の駒に昇格できる(たいていは最も動けるQueenに昇格させる)。
他にもCastlingやEn passantなどユニークな動きがある。Castlingは特に防衛上重要だ。KingとRookの間にあるBishopとKnightが出て行った場合に、KingがRookに隠れるように移動することができる。ただしKingとRookの間のスペースが敵駒の攻撃範囲に入っている場合はCastlingは出来ない。ゲームは白が先手で、王手はcheck、詰みはcheck mate。他にstalemateというのがあって、これは詰んではいないのでこの状態でいる限りKingにcheckは掛っておらず負けてはないが、さりとて他に動かす手が一切ないという状況を言う。どんなに優勢でも劣勢でも、これは引き分けだ。
ルールを習った後で、後輩の一人が紙で小さな駒を作ってくれ、初めてゲームをしてみた。Knightの動きとPawnの動きが新しかった。また、QueenはKingのすぐ横にいることから将棋の金のように守備に扱ってしまったが、チェスではQueenが攻撃の柱になる。Bishopは角と思っていると、チェスではPawnの次に位の低い駒なので、たとえばKnightやRookと引き換えに相手のBishopを倒すのは良い手とは言えない。また白の所にいるBishopは、チェッカーボードの白い所にしか行けない(黒い所にはどうやっても行けない)。逆もしかり。これは詰みを考えるとき重要になる。
一度倒された駒が失われたきり使えないというのも大きな違いだが、これは駒の色が違うので実際やってみると納得だ。将棋を知らない後輩にこの話をすると「倒した敵の駒を味方にして使えるなんてslaveだ」と言っていた。Rookが序盤・中盤で余り出番がなく最終局面で活躍するのも面白く、英語のRookie(新人)はここから由来するというのもうなずける。Late bloomer(遅咲きの人)というわけ。初めてのゲームは後輩の先生が色々解説してくれたので教育的で、もちろん負けたけど非常に為になった。のめり込ませる魅力があって、暇な時間や屋内に閉じ込められた冬などに人生を豊かにしてくれること請け合いだ。