九州にいた研修医1年目のとき、腎臓内科志望でもないのにどういうわけか野生のイルカがみたくなって一人で天草に行き(写真)、東京の祖母に絵はがきを出した。手紙がEメール、SNSなどにかわって久しいが、旅行先から親しい人に絵はがきをだしたくなる人はまだ多いのではないか。自分が何を書いていたか覚えていないが、どうやら仕事の話も書いていたようで、祖母からの返事はこうある。
知樹さま。やっぱり知ちゃん!が呼びやすいです。ご老人と接するのは、こんどがはじめてではないにしても、患者さんとなると心づかいも大変でしょうネ。知ちゃんは、やさしいから、その気持ちが通じて、患者さんもうれしいことでしょう。こちらは淋しくなりましたけど、西に向かって(お台所が西になります)「知ちゃん、ガンバレ!」を繰り返しています。
天草にいらっしゃったとか、ステキ!です。たまに、気むずかしいおじいさんおばあさんいらっしゃったとしても、その方(たち)の「越し方」+苦労かもしれませんけど。
二年間は私たちには長い時間ですけど知樹先生にはアッという間かも。
では又、お身体を大切にしてネ。
(絵葉書をありがとうございまいした。トテモ、トテモ、ウレシイです。おじいちゃんにもよんであげました。)
05.5.5 夜
おばあちゃん
孫を心配する手紙なんて世界中どこにもあるとおもうけど、「越し方」+苦労だなんて言い得たものだ。自分のことも考えていたのかもしれない。そう言われれば、人間何才であっても「越し方」と苦労があるなと、この手紙を読むとなんだか納得してしまう。なおこの手紙はつい最近に、祖母が他界して3年たってから発見された。私が返信先を書かなかったせいもあり祖母はこれを送ることができなかったのだ。
しかし、この手紙がこのタイミングで届いたことにも意味があるんじゃないか。病棟で患者さんとご家族に病状説明しながらそれぞれの「越し方」+苦労を振り返って、そう思った。