1/27/2011

Six of one, half a dozen of another

 "six of one, half a dozen of the other"とは、「二つの選択肢の間には実際のところ違いがなく、どっちみち同じ」という意味。日本語の熟語で言えば、朝三暮四、同工異曲、大同小異、五十歩百歩などが近い。

 患者さんに病状を「Aかもしれないし、Bかもしれない」と説明したら、この表現が返って来た。私からすればAとBは病気のタイプ、治療法、予後が異なるのだが、患者さんからすれば大同小異だったのだろう。

 一人目の患者さんは、他院で挿入されたpermanent IVC filterに塞栓が引っ掛かり静脈鬱滞をきたし、腎静脈以下の下大静脈から両腸骨静脈、大腿から下腿にいたる広範囲な塞栓症を作って搬送されてきた。
 
 塞栓とフィルターを除かなければ下肢血流が途絶する恐れがあるが、塞栓を除くにも抗凝固・線溶剤を使えば出血のリスクが高い。フィルターを除くのは(permanentなので)不可能ではないが実験的な手段だし、除けば塞栓が肺に飛ぶ恐れがある。

 下肢血流の途絶、出血、肺塞栓・・これらはいずれも違う病態だが、患者さんからすればどれも困った事態であることに変わりない。

 二人目の患者さんは目の奥が痛いというので、腫瘍の転移や感染症(化学療法後のneutropenic feverで入院していた)を心配してMRIを撮った。しかし腫瘍であれ感染症であれ、患者さんにとっては"one of six or half a dozen of another"というわけ。

 ちなみにMRIでは症状と一致する側の錐体尖にopacified air cellsが見られ、otology(耳鼻科の中でも耳だけを専門にする科)に掛けたらpetrous apicitis(錐体尖炎)という。でも結局何によるものかまでは分からず、外来でフォローすることとなった。

 画像診断上コレステリン肉芽腫ではないようだが。enhancing lesionではないとはいえ、病歴からは腫瘍の転移が強く可能性として残るので注意が必要だ。



(Wikipedia "Six pack rings"より引用)