1/05/2011

Oncology

 ひさしぶりに腫瘍内科ローテーションが始まった。分子生物学、ウイルス学、免疫学などがintegrateされた学問でfascinatingだ。たとえばhead and neck cancerではHPVウイルス(とくに発がん性の高いHPV-16と18)がリスク因子であるが、ウイルスのDNAがコードするタンパク質(早期に転写翻訳されるE6、E7)ががん予防遺伝子のp53やRBを抑制したり、細胞周期を廻すのに関与するp17を異常発現させたりすることで発がん作用を起こすと学んだ。
 病理組織がHPV陽性の例は、より若い人に多くみられ、舌根と扁桃が圧倒的に多い。陰性のものにくらべ予後がよいが、陽性でも他のリスク因子(飲酒、喫煙、噛みタバコなど)がある場合は変わらない。予防目的にHPVワクチンを(cervical cancer予防だけでなく)head and neck cancerに用いてはどうかという話もある。cervical cancerほど患者数は多くないが、頭頚部がんは手術しても放射線治療しても大がかりになるばかりでなく、発声・嚥下など基本的な機能が侵されるので検討の価値はあると思う。
 免疫学といえば、治療(予防でなく)目的のがんワクチンがホルモン療法に不応の前立腺がんに応用され始めている。Sipuleucel-T(商品名Provenge)は、患者さんの白血球(とくに抗原提示細胞)を取り出し、がん細胞に特異な抗原(prostatic acid phosphatase)とGM-CSFと混ぜて培養することで、がん細胞をやつける白血球に育てそれらを増殖させたもの。これを患者さんの体内に再び戻すことで、がん細胞に対する免疫反応を起こすのが狙いだ。
 こういった話が回診で盛りだくさんに出てくるのでウキウキする。分子標的療法の話はさらに楽しい。今日はフェローがmetastatic melanomaに対する抗CTLA4モノクローナル抗体(ipilimumabとtremelimumab)の話をした。CTLA4はT細胞活性化に必要なco-stimulation(B7とCD28の結合)を邪魔するので、この抗体でCTLA4を駄目にするとT細胞活性化が促されがん細胞に対する免疫反応が進むという仕組みだ。生存期間を数カ月伸ばしたという研究結果がでている。
 このCTLA4に関しては、さらに話が広がる。この分子を逆にはびこらせれば、co-stimulationが邪魔されT細胞活性化が起こらなくなると考えられる。それで、実際にCTLA4-Igという分子標的療法(たとえばAbatacept、商品名Orencia)が自己免疫疾患や移植後の免疫抑制に用いられ始めている。免疫学が幅広い分野に応用されているのをみて、これが21世紀の医学なのだろうなと痛感する。ともあれ、勉強することが沢山あって飽きることがない。