12/29/2010

pulmonary embolism

 重度の肺塞栓症は、ICUで経過をみる。多くの場合、患者さんの血行動態は保たれ、1-2日でICUを出ていく。これは考えると不思議なことである。左右の肺動脈が詰まって、さらに主幹部にも左右紐状にまたがる血栓があるような場合、右心室からの血流はブロックされているはずである。右心室はもともと肺循環が低圧システムなため壁も薄く、急激な圧上昇には対応できない。たとえ小さな肺塞栓であっても、肺血管抵抗が上がることで右心に耐えられない負荷が掛かるはずだ。右心不全の他にも、右→左シャントによる低酸素血症や致死性不整脈をおこす可能性がある。
 にもかかわらず、ICUで毎日のように運ばれてくる重度の肺塞栓症のうち血行動態が不安定な例は(私の数カ月のICU経験で)数えるほどしかない。心エコーやCTで右心に負荷が掛った所見がみられることはあっても、血圧がどんどん下がり補液に次ぐ補液を要するような例は稀である。それどころか「偶然見つかったが血圧も酸素濃度も正常」というような例まである。そういう場合どんなメカニズムで血行動態をたもっているのだろう。亜急性~慢性に少しずつ血栓が肺に蓄積していくような場合は患者さんがうまくtolerateしていくのか。側副血行路があるのか。