12/27/2010

Whisky

 喉頭蓋炎または血管浮腫でICUで経過観察となった患者さんがじつは大酒家で、ICU入室後にアルコール離脱症状をきたした。痙攣したら気道確保しなければならないが、喉頭蓋が腫れているので気管内挿管には気道閉塞のリスクがある。Fiberoptic intubation、うまくいかなければ外科的気道確保(緊急気管切開)かなあと考えていた。

 指導医に相談したら、「アルコール離脱を止める最も早くて簡単な方法はアルコールを与えることだ。飲めるならウイスキーを60ml(一日三回)与えよ、飲めないなら経鼻胃管から注げ」とのこと。ウイスキーとビールが治療としてオーダー出来るとは噂に聞いていたがオーダーしたのは初めてだ。ほどなく淡い色でよい香りのウイスキーが運ばれてきた(銘柄は不明)。

 しかし患者さんは「私はジンが好きで、ウイスキーはオエッてなるから飲みたくない」とかぶりを振る。経鼻胃管の挿入を試みるも、喉頭蓋が晴れているためか(あるいは患者さんが暴れているためか)食道に入らず、気管に入って低酸素血症をきたしかけたので止めになった。困ったなあと思ったら看護師さんがすごんで何とか患者さんがウイスキーを飲んでくれた。

 これが朝6時で、私はシフトが終わったので帰った。夕方帰ってみると、ほどなくベッドサイドで麻酔科が何という困難もなく挿管して鎮静剤で離脱が抜けるまで待つことになったと聞いた。