今日はjevenile rheumatoid arthritis(JRA)と診断された女性がセカンドオピニオンでやってきた。私が先に問診したが症状がどうにもJRAらしくない。胸骨上部の圧痛は触知したが、他には目ぼしい所見もなく診察を終えた。
ところがその先生は、胸骨の圧痛と訊いてすぐさまjuvenile spondyloarthritisっぽいと感じ、その後頸椎の可動域制限と首を曲げたときのcracking(パキパキという音)、脊柱の若干の堅さを示した。さらに他の情報も合わせ、臨床的にほぼ確定診断した。sterno-manubrium joint(胸骨頸部と体部の間)はjuvenile spondyloarthritisの好発部位らしい。さらに爪に注目すると水平なridgesが多数見られ、皮疹はないけれどもseronegative spondyloarthropathyの中でも多い乾癬関節炎の可能性が高まった。
別の患者さんは、Hashimoto甲状腺炎の既往がありANA(自己抗体)高値で紹介されてきた。目ぼしい症状や所見もない。しかし先生は、患者さんの手指の微妙な異常に気づき、眼底鏡を最高倍率にして爪の甘皮を観察し始めた。すると毛細血管の怒張や結節などが見られるではないか。
この先生は技能だけでなく、患者さんとの接し方もすごい。理路整然と説明するだけでなく、目線が物凄くcaringなのだ。といっても全くベタベタしていない。寧ろドライだ。でも透徹した理性の光が全てを明らかにし、節々の痛みに苦しむ患者さんを涙させてしまうのだ。
さらにこの先生、臨床だけでなく治験にも積極的に関与しており、ことにSLEの治療薬としては50数年振りFDAに認可されたBenlysta®(一般名belimumab、B lymphocyte-stimulator inhibitor)の臨床応用にも貢献したらしい。久々に優れた先生と出会って、日頃のナアナアな診療で曇っていた目が晴れた。
イエール大学の校章 (Wikipediaより) |