ふとジェダイについて考えた。現在の医療があまりにも標準化され、あたかも診療のアート亡きが如くなのを見かねてのことだ。レジデンシーを卒業して開業でもすれば、保険会社、役所、第三者機関などによる絶え間ない査定・評価・規律・規制に縛られていくらしい。
私は、医師とはジェダイ騎士のようにジェダイマスターからフォースの使い方と行動規範・倫理観を習い、それを後進に伝えていくものかと思っていた。しかし実際には、ダースベイダーが支配する銀河帝国の一兵卒にすぎないのかも知れない。それが堪らなく哀しい。
標準化医療は必要だ。「人は間違いをする」というテーゼは否定できない。しかし結局標準化とはどんな阿呆でも間違えないようなセイフティーネットだ。行き過ぎると、「お前たち医者は何も知らず、放っておくと勝手なことばかりし、ミスをし、嘘をつき、怠ける」と言われているようで、非常に不快だ。
医療の質の確保というのは「最低限の」質の確保であり、ベストの診療とはその遥か上にあるのだと私は信じる。性悪説を唱えた荀子は、性悪を改めるのに礼(外的な規範)を奨励し、法治主義の元となった。しかし、彼はそれのみならず、善を学び続ける継続的な努力も勧めているではないか。