11/18/2013

広域チーム医療

 施設に住む物言えぬ高齢者が誤嚥後にERに運ばれてきて、施設の人が帰ってしまっていたらどうする?幸い吸引して酸素化は改善したし、肺炎所見もない。そのままお帰しするか?私なら、施設に電話する。そして最近の様子を聴いて誤嚥の原因を探す。そして原因が見つかったら、それを防げないか考えて嘱託医に手紙を書く。
 しかしそれは、嘱託医を責めるためでも、施設を責めるためでもない。患者さんのケアを向上させるために何か貢献したい、それだけだ。刻み食をトロミ食にしては?鎮静剤の量が調節できるなら考慮してはどうか?など具体的だが押し付けないスタンス。ケアに関わらせていただいて有難うございます、というスタンス。
 というのも、たとえば鎮静剤が効きすぎていたとして、そこには鎮静剤を使わなければならなかった理由があるはずだ。鎮静剤を使わなければならないほど認知症が進行していたのかもしれない。開始時は他害や転倒のリスクが迫っていたのかもしれない。手紙は、その辺の事情にも配慮して書かねばならない。
 それから、次に誤嚥して今度は肺炎になったら、どうするのか?胃ろうの議論は?治療のゴール、advanced care planは?これをERで決めろと言われても困るが、かといって嘱託医の先生も話すタイミングをなかなか見つけにくいものだろうと察する。だから「(難しいでしょうが)そろそろご家族とお話する時期かもしれません」と、そっと背中を押す。
 私は、忙しいERで前シフトから「CTで肺炎所見がなくCRPが陰性だから帰宅です」と引き継いでも、こうしてちゃんと電話して手紙を書ける医師でありたい。それが、私なりのprofessionalismでありsystem-based practiceだ。私は何も米国でマニュアルだの語呂合わせだのだけを学んできたわけではない、こういうことも大事だと学んできた。