指導医として大事なことの一つは、人の意見をひきだすことだと思う。私も、フェロー時代は指導医に「2つの脳は1つの脳より優れているのだから、私と違う意見でもお前は自分の意見を言うべきだ。私が間違っているかもしれないだろう?というか、お前が何か違うことを考えてる時は、黙っていても丸分かりだぞ」とよく言われた。
そんな時に「自分はこれだけassertiveになる訓練をつんだつもりが、まだまだ文化的背景にしばられているのか!」と思った。『朱に交われば赤くなる』というが、朱にはなれない。それでも白地を背にすれば真っ赤なように、日本に帰ると私はめちゃくちゃ喋る人だ。『青は藍より出でて藍より青し』という言葉を目指して、自分らしいassertivenessを追求したい。
とまあ脱線したが、今月は「先生はどう思いますか?」「分からないことは質問してください」と繰り返したのみならず、自分は黙ってフェローの先生に回診させてみたり、色々なアプローチをトライしたおかげか、意見や質問がよく聴かれるようになった。おかげで、診療に用いられる脳が増えた。
たとえば、「どうしてHIV/AIDSではリンパ球数を気にするのに、ステロイドによるリンパ球減少は気にしないのだろう(この症例、低いけど)?」と研修医の先生が質問する。それで、答えるべく「ステロイド、リンパ球減少」でGoogle ScholarしたらCMV感染の症例報告がたくさん出てきて、肝酵素異常とかもある本例でも抗原陽性だった。さらに、CMV DNA-PCRしか計ったことのない私に、フェローの先生が検査の読み方を教えてくれる。
1錠のブロチゾラムを飲んでから起きない高齢腎不全症例をみて研修医の先生が「ブロチゾラムの高齢腎不全における半減期はどれくらいですか(添付文書に載っていません)?」と質問する。「長い」で終わらせようかとも思ったが、指導医たるものそれではいかんとGoogleして、文献を見つけた(Br J Clin Pharmac 1983 16 299S、Br J Clin Pharmac 1983 16 309S)。