トランプ氏が次期大統領になって、オバマ大統領はTPPも通せないし、残り任期でできることはメルケル氏の4選を応援するくらいだと思っていた。しかし、それでも共和党と民主党が一緒に可決できる法案というのはあるもので、昨日可決したのが21st Century Cures Actだ。やっぱり医療は人類共通の課題だから、党派を超えて賛同を得られる。予算の48億ドルは、薬や医療デバイスの認可を速く簡単にする規制緩和のほかに、NIHの研究、プレシジョン・メディシン・イニシアティブ(ゲノム情報などをもとにして一人ひとりに合わせたいわゆる「テーラーメイド医療」)、BRAINイニシアティブ(脳疾患についての詳細な脳マッピングプロジェクト)などに使われるという。
キュアなんていうと言葉の響きがいい(下図)けれど、要は製薬業界の圧力を受けた規制緩和法案で、何も知らない患者さんが薬害や副作用に簡単にさらされると懸念する声もある。それでもやっぱりキュアっていい響きで、撲滅したい病気はたくさんあるから頑張ってほしい。例えばこないだアルツハイマー病に対する抗アミロイドβモノクローナル抗体のSolanezumabが治験で失敗したけれど、似たような抗体はたくさんあるし、beta secretase cleaving enzyme(BACE)拮抗薬という別のクラスの薬もたくさん治験中だ。Roche、Biogen、Lilly、Merck、AstraZenecaがリードしているようだが、日本の製薬会社も研究しているといいなと思う。