脱感作は、特定の生体ドナーに対する抗HLA抗体を対象にする場合と、不特定の適合献腎ドナーが見つかりやすくする場合がある。
※ただし前者の場合も、あまりにも抗HLA抗体の抗体価(にある程度まで相当するMFI)が高い場合には、無理なのでスワップを模索する。患者に提供したい生体ドナーは別の患者に移植し、そのかわり他の生体ドナーから移植提供を受ける道であるが、その場合も適合ドナーが見つかりやすくするために脱感作が必要になる。
適合献腎ドナーを見つかりやすくする方法は、ちょっとトリッキーである。なぜならば、臓器割り当てルールが改正されたからだ。高度感作患者は非常に高いポイント(200点)が与えられて、適合ドナーがいた場合リストのトップにくる。また、広いドナー検索範囲(アメリカ全国)から適合ドナーを探せる。
これにより、ポイントがもらえなく(ドナー検索範囲が狭く)なりすぎない程度に脱感作したほうが、適合献腎ドナーが見つかりやすくなった。
そして、リストする抗HLA抗体の選び方も重要になった。移植施設は、たとえば「この患者さんの抗A2抗体はMFIが3000ですが、うちは5000までは不適合とみなさず、リストには載せないことにします」と言える裁量がある。そうすれば、A2のドナーもこの患者さんに回ってくることになる。回ってきても、ドナー腎の質やクロスマッチの結果などによっては移植を断念することもあるが、すくなくともチャンスは来る。
ただ、不適合抗体を載せなさすぎると、こんどはcPRAが下がってしまうので、ポイントがつかなくなったり、検索範囲が狭くなったりしてしまう。だから、ほどよくMFIのカットオフを選んだり、載せる感作HLAを選んだりする必要がある。
脱感作は、頻回な血漿交換を必要とする上、そうして移植に持ち込んでも免疫学的リスクは高く、さまざまな追加治療(IVIG、抗CD20モノクローナル抗体、抗形質細胞小分子など)を必要とする。それらを要しない適合献腎ドナーが見つかるなら、それに越したことはない。