半年前に話題にしたexpedited placement varianceが、AJTの表紙に取り上げられた。いまでは論文・学会などではout of sequence、OOSと呼ばれることが多い(移植施設内では、自分たちでどの患者に移植するかを決められるためopen offerと呼ばれる)。衝撃なのは、いまやOOSが米国腎移植の20%を占めるようになったことだ。
2025年2月号AJT表紙 |
移植待ちリストに従って移植施設に声を掛けても断られ続けた腎臓をOOSに回すことで、捨てられる運命を回避しているはずで、絵のように待っている人がいるのに「横入り」をしているわけではない・・はずである。
しかし、「捨てるべからず」のプレッシャーが強くかかっているOPO(臓器調達機関)にしてみれれば、OOSで受け取ってくれるという当てがある移植施設は有難い存在で、中には通常の手続きを経ず直接OOSに回しているケースもあった。特定の移植施設との「パイプ」も、明らかになった。
問題は、OOSの腎臓と通常手続きの腎臓の質が必ずしもはっきり分かれていないことである(赤が通常手続き、緑がOOS、青が移植されなかった腎臓)。これでは、横入りといわれても仕方がない。患者にしてみれば、OOSをたくさん受けれる施設に登録した方がお得、ということになる。
AJT 2025 25 343 |
また、OOSで移植された患者はより高齢(腎臓の耐用年数が短いと見込まれるため)なだけでなく、白人・アジア系・女性がより多いといった偏りも明らかになり、公平性に大きな疑問符が付いた形だ。
OOSを始めれば、移植件数を増やしたい施設がどんどん参加して、いろんな偏りと不透明さが生まれるであろうことは目に見えていた。通常手続きのなかで何とかする方法があればよかったのだろうが、見つけられなかったのだから、仕方がないとも言える。
今後「OOSありき」になれば、移植施設ごとのOOS件数や、OPOごとのOOS腎臓の提供先などが開示されるようになるかもしれない。あるいは、通常手続きのなかで何とかする方法を誰かが編み出すかもしれない(そして、その人達には臓器割り当てで2度目のノーベル賞が与えられるかもしれない?)。