医師でアメリカに行きたいという人は多いだろうが、韓国に行きたいという人はどうだろう。韓国の医師免許を取るには韓国の医学部を卒業して韓国の医師国家考試を受けるか、韓国以外の大学を卒業してから予備国家考試を受けて、筆記試験と実技試験に受かったうえで、韓国の医師国家考試を受ける。予備試験のよい参考書は韓国にはあまりないが、予備試験はUSMLEのステップ1、ステップCSに似ているそうだから、それをやる人が多いそうだ。しかし、その前に韓国語ができなければならない。
私は「はかない夢は毒で世間とは結末の決まった本のようなもので現実を変えることはできない」と心配してくれる人がいても「そう、それでも私には夢があってぼろぼろになってもその夢を信じていていつか冷たい運命という壁を飛び越え羽ばたく」という考えでいままで生きてきた。だからこそ今も欺瞞と犠牲と無意味だと思うこともあってもしたたかに日本の社会と会社組織に適応しようとしている。その一方で、韓国と韓国語に魅せられてから韓国語のほうも少しずつ勉強している。それで年末ソウルに行った際に基礎医学と実技試験攻略の本を買ってきた。
まず解剖学の本を読み始めたが、日本では医学用語がほぼ漢字語と英語で統一されているのに対して韓国では韓国に固有の言葉もたくさん混ざっていて興味深かった。例えば腎臓は、これをそのまま漢字語として韓国語で読むと신장(シンジャン)だし、これももちろん用いられる。しかし腎臓を意味する韓国固有の言葉もあって、それは콩팥(コンパッ)だ。콩は豆のことだから面白い。ヘンレ係蹄は콩팥세관고리(コンパッセグヮンゴリ)で、콩팥は腎臓のこと、세관は漢字の「細管」、고리は輪っかのことだからloopの韓国語訳というわけだ。
他にも肺は漢字で폐、固有語で허파、胆嚢は漢字で담낭、固有語で쓸개、膵臓は漢字で췌장、固有語で이자。脳下垂体はそのまま漢字で뇌하수체だが、前葉・後葉は「前」「後ろ」を表す固有語を用いてそれぞれ앞엽・뒤엽という(葉はそのまま漢字)。同様に副腎はそのまま부신だが皮質・髄質は「表」「中」を表す固有語を用いて겉질・속질という。英語のfeedbackは「後ろに食べさせること」と固有語で直訳して되먹임、一方clearanceは漢字を使って청소율(清掃率)。
私は医学部時代からアメリカに行きたかったので医学書も英語のものを買って、医学用語も日本語と一緒に英語で覚えて、英語も勉強して、USMLEの勉強もした。だからもし日本以外の国の医師免許をとってみたい(そしてそこに住んで働いてみたい)という人がいたら、事情を調べて見たらいいとおもう。日本の免許がそのまま使えるならそれが一番ラッキーだが(それでも言葉は勉強しなければならないだろうが)、試験を別に受けなければならないなら対策すればいいことだ。意志のあるところに道ができる。