2/27/2019

忘れられない一言 55

 初期研修を終えたあと、総合内科で「シニア」的なお仕事をしていた時に、科内で薬剤師さんからTDM(therapeutic drug monitoring、抗菌薬などの血中濃度をモニターし投与量を決めること)を講義してもらう機会があった。

 当時の筆者は今以上に生意気だったので、聴きながら(大学で薬理学の単位を落としかけたことも忘れて)「そんなことは知っている」と思いあがり、講義のあとで自分の知識をひけらかすような質問を沢山した。そうして場がなんとなく変な雰囲気になったあとで、ボスがこんな質問をした。

薬剤師さんが、どんなときにやりがいを感じておられるかに、関心があります

いま思い返しても、本質をつく言葉だなと思う。患者さんも「ひと」なら、医療職もまた「ひと」。ひとりひとりが、苦楽を共にする仲間。中島みゆきの『糸(1992年)』は「あなた」と「私」の二本だが、医療というのはもっとたくさんの糸が織り成す、もっと大きな布だから、きっともっと多くの誰かを暖め傷をかばうのだろう。