9/03/2012

research month

 初めて経験したresearch monthが、終わろうとしている。時間とやることををすべて自分で調整して決めるためか、ずいぶん長く感じられた。どれだけやってもいつまでやっても終わらない、長いスパンのプロジェクトを進めることによる固有のストレスもあった。また、創造的な仕事なので、個室のオフィスがあればもっと集中できるだろうにと思った。しかし一日一日できることをやって、いろんなことが進んだ。通常業務に戻るので、一旦頭を冷やし、「時間ができた時にまた、あれもこれもやりたい」という気持を高めよう。

8/25/2012

Go-getter

 今日はボスとフェロー達が話し合う日だが、同時にあるフェローの誕生日で、かつ今月はもう一人のフェローとボスの誕生日とわかった。じゃあお祝いするかと皆沸いて、ケーキを買おうとしたが病院には丸々一個のケーキがない。
 普通はここで諦めるところだが、私は街のケーキ屋さんを検索し、電話したら一時間以内に届けてくれると言うので、さっそく注文した。そして諦めていた秘書さんに"Did I not tell you I am a go-getter?"といってみた。
 Go-getterとは、ambitious and enterprising personのことで、enterprisingとはshowing initiative and willingness to undertake new projectsということ。雑誌で見つけたお気に入りの表現だ。ついでに"If it's not impossible, it is possible."というのも思いつき、使ってみた。
 そんなわけで、可愛らしい直径6インチで4-5層にレモン風味のクリームが入った高級なケーキが、ピンクの箱でピンクのリボンにくるまれて届いた。それでみんなでお祝いした。あまり感情を表現しないボスも笑顔だった(ので、別のフェローがスマートフォンで写真に収めた)。

7/17/2012

Chop, chop

いまのモノ書きプロジェクトは、300語前後のエッセイに内容をまとめるのが目下の課題だ。第一稿を書きあげると、400-500語くらいになる。そこで、ペンの代わりに包丁を手にして(比喩)、不要で冗長な語句を削る。スピーチの時にも"言葉を節約せよ"と言われたものだが、本気でやってこなかった。長ければ長いほど伝わると思っていたのだ。
 しかしブログ記事ともなると、そもそも読者のattention spanがもつ長さでないと読んでもらえない。私自身、他の人の記事で400語を越えてくると、読む気がしない。そのブログで多くの人が読んだトップ記事は200-300語なことにも気づいた。内容を盛り込み過ぎず、分かりやすく、読みやすく、面白く、印象的な結論で締める。これが目標だ。

7/14/2012

いろいろある

"Chance favors the prepared mind"というが、モノ書きのプロジェクトが始まってから色んな面白いことが起こる。先週は、human behavior(ポリネシアの民俗学)を研究して引退した老学者の人と偶然食事する機会があり、「君は本を書くのか?」と聞かれた。本は書かないがブログを書いているというと、「君は本を書くべきだ。human behaviorを研究している私には、君が他の人と違うことがなんとなく分かる」とおっしゃる。そのあとフォーチュンクッキーまで「あなたは思考が明晰で、あなたの視点を他の人に伝え信じさせる力がある」という。
 なんだこれはと驚きつつ、勇気づけられて日々モノ書きしていたら、今度はscience writerの第一人者であるCarl Zimmer氏が講演しに来た。彼は科学モノのベストセラーを何冊も書き、記事をNew York Times、National Geographic、Time、Scientific Americanなどに何本も書く売れっ子作家だ。Science Journalism Awardを受賞した人気ブログも書いている。大学のWriters' Workshop夏期プログラムで教えに来るついでに、私のオフィスのすぐそばで講演するというので行ってみた。
 講演の全ては聴けなかったが、journalistを目指す学生で一杯の会場で、彼があきらかにプロが発するオーラで講演していた。「ネタというのは座って待っていても来ない、探すことだ」というのに共感した。自分が今していることを彼に知らせるのは気が引けたが、何か起こるかもしれないと、思い切って講演終了後に壇上に駆け寄り話しかけた。すると、スケジュールが押していたのでやや面倒くさそうだったが「誰に書いているのかを配慮せよ、それに応じて書き方を大きく変えることが重要だ」と一言アドバイスしてくれた。

7/07/2012

Effective Professional Written Communication

 今年の目標の一つは学んだことを質を高めて発表することだが、いまそのプロジェクトが着々と進行している。それにしても、professional writingというのは今まで学んできた英語と違う領域で、学ぶことがたくさんある。ただ書けばいいというものではないのだ。

 たとえばカルテで、私はeditorial commentを挿入していたことに気づかされた。患者さんがよくなって嬉しいとか、患者さんが良くならないのはこのせいだ、あれが悪い、などという自分の価値判断に基づく評価のことだ。これは必要ない。何よりカルテはmedico-LEGAL documentなのだし、何年後に誰がどんな視点で読むか分かったものではないのだ。

 あるいは編集者の方へのメールで、私は「僕、こんなに頑張って書いたから読んで!」と書いていることに気づかされた。これは、甘い。大事なのは書いたものの内容で、それが編集者からみて発表するに値すると信じる理由と、発表するに値するかをプロの目で判断してほしいとお願いするという点に尽きる。

 実際の記事についても、「僕、こんなに一生懸命勉強したよ!」と書いていることに気づかされた。これまた、甘い。大事なのは読者を惹きつけること(engage the readers)、途中で退屈しないように内容を順序立てて整理すること(make it flow)、それに読者が読んで為になるように結論をはっきりさせることだ。

 このように文章の目的をはっきりさせて、一語一句に効果的な意味を持たせるような書き方を学ぶことは、将来にとってとても有益だという予感がする。これを教えてくれている先生が、なんと英語が母国語でないことにも驚嘆するが、逆にいえば自分にも出来るかもしれないということだ。

6/07/2012

case abstracts

久しぶりにcase abstractを投稿した。今回、字数を減らすために冗長、不必要、重複したところを徹底的に見直した。仮説や主張が大事で(ある先生はこれを"meat"と言っていた)、それをいかに論理的に守り、守るために効果的なcase presentationをするかという考えが身に付いた。採用されたらいいなと思う。

6/01/2012

研究と農業

 研究の準備をしているが、まるで農業だ。農業も研究も、結果が出るまでに時間が掛かる。データベースを作るための作業は、くる日もくる日も広大な畑を掘っくり返して土に空気を入れ、種まきの準備をしているかのよう。それに比べると「論文を読んで勉強になった」だの、「患者さんを治療したら良くなった」だのはimmediate gratificationだ。秋の収穫を夢見てコツコツやろう。

5/21/2012

骨折り損のなまくら

こないだスタッフの先生に"You can't be good at everything."といわれた。毎週、これでもかと言うぐらい学ぶことがあって、それを階段一段飛ばしにかけ登ろうとしている私。仕事と生活のバランスもあったもんじゃない。でも学びの密度が濃いのは確かだし、日一日の成長を実感できる楽しみは、何にも代えがたいと思える。
 問題は、駆け上ってどうしたいかだ。今はフェローシップだから、全てを学ぶ必要がある。全てをインテンシブに学んで、自分の診療の核となる知識と経験を積むのは良い。ふつうは、そのあと「飯を食っていく」のである。つまり仕事だ。ここで得た知識、経験、生涯学習のやり方、相談できる人脈、などで、患者さんを診察していく。それが、一人前ということ。
 それが今の私は、筋斗雲にのってお釈迦様と高さ比べをしている孫悟空か、あるいは牛と大きさ比べをしようとおなかを膨らませるカエルのようだ。全速力で知識の泉をがぶ飲みしているが、それでburn outしたのでは仕方がない。このままいけば、burn outしても無理はない。それはなぜか?それは、目標がないからだ。
 一点にフォーカスして、それが好きで、それを突き詰めれば、何をも突き抜ける強さを手に入れることができる。まんべんなく好きで、まんべんなく拭き拭きするだけじゃ、骨折り損のなまくらだ。全てを見た後で、何がしたいのか。いや、完全なるすべてを見ることなど出来ないだろう。どこかで「あれもこれもあるけど、私はこれ!」と言えなければ。
 一人以上のスタッフに"You will be successful wherever you go."とも言われている。問題は、どこにいくかだ。どこにも行けなければ、なにもできない。臨床が好きなら、なんでも一通り出来て、生涯学習しながら知識をアップデートして、全分野に少しずつ経験を積んで、患者さんによい診療を行い、職場でよく機能して、それでいいだろう。
 教育が好きなら、医学生、研修医、後期研修医(ないしフェロー)がいるところで働いて、自分のもつ知識と経験を惜しみなく与えよ。Best teacher awardを目指し、名授業、名講演ができるようになれ。また、master clinicianとして他から呼ばれるような医師になれ。研究がしたければ、grantを取って、論文を書いて、息の長い論証とよく練られた実験をして、真理をつかめ。
 多少の失敗をおそれず、多少の逆境にくじけず、強い意志をもって、第一人者を目指して突き進む。それも、好きで突き進む、その過程じたいが幸せなこと。それがフェローシップ後の人生に必要なこと。テストで90点取りましたじゃダメ。誰にも分からないこと、自分の心の中にある核が、これからの人生を動かす。

5/17/2012

Town hall meeting

 今日は初めてtown hall meetingに行ってきた。病院が財政難なので、研修医(フェローも)の保険料と自己負担額を上げるという決断がresidents' councilに断りなく行われたことに対し、猛反対が起きて実現したものだ。全ての科におよぶ、約800人の研修医とその家族に関係することなので、会場は数百人でいっぱいになった。配偶者、子供もたくさん来ていた。

 まず副学長が謝った。better communicationが必要だったと。そして君たちはとても重要な存在だ、大事に思っている、といった。そのあとで財政状況がどうの、他の大学でもやっていることだ、うちの病院でも他職種に比べて研修医は恵まれている、と決断に至った理由を説明した。経理課の人もいて、やはり同じようなことを言った。

 そのあとコメントや質問タイムになった。まずは自分たちに何の相談もなくこのような重大な決定がなされたことに対する怒りと悲しみ、なぜそうなったのかの追求が行われた。経理課の人がうまいこと言って、「これからはちゃんとする」と収めようとしていた。組合化をほのめかす発言(どうしたら私たちの権利は守られるの?)もあったが、組合という言葉自体は出なかった。経営側とのコミュニケーション、関係を始めるところから、みたいな話になっていた。

 次に、いかにこの決断が不合理であるかについての意見、他に方法はなかったのか、なぜ研修医がピンポイントに対象なのか、これは契約違反ではないか、今年からやってくる新研修医は何も知らされていない、来年からこれを知ってよい研修医が来なくなるかもしれない、など。私も「なにもbenefitを削らなくても、各人がcost-consciousになってquality improvementに励んだほうが医療費の節約になるんじゃないの?」という意見を例をあげてジョークを混ぜて発言した。同調者もいた。

 そのあと、個々人の事情について意見が聞かれた。スタッフも来ていた。他のもっといい大学に行けた志願者を「うちはbenefitが充実している」といってスカウトしてきたのに会わせる顔がない、研修医の彼らにはretirement benefitがないし、給料も安いし、家族もいる。"it's a big deal、you guys woke up sleeping tigers"と経営側の対応を批判していた。

 他にも、子供がいてbenefitが充実しているからアイオワに来た、保険があがったら治療費が払えない、とか、持病があるけど保険のおかげで治療ができている、とか、大病に掛かったが保険があったおかげでこうして働けている、とか、子供を産むのにちょうどいい時期だったのに、保険が上がったらトレーニングが終わるまで待たなければならない、それでは妊娠関連のリスクが上がってしまう、とか。

 さらには、州法を取り上げて「retirement benefitがないなど、州法でも研修医は別枠で扱われており他業種と同じbenefitでなければならないという前提はおかしい」という指摘をする者もあり、さらに「私は州法など知らないが、研修医というのは患者さんと病院のために命を捧げているようなもので、虫垂炎になっても当直業務を続けるような人達であるから、とにかくそんな私たちの受ける医療を保証しないのはおかしい」と続ける者もあった。

 経営側は、とにかく沢山の挙手に対して次々と発言をうながすばかりで、質問には余り答えなかった。逆に言うと、とにかく相手に言わせて、聞き役にまわっていた(これが英語でいう"I hear you"、同意も批判もせずただ聴くという態度だ)。質問の答えを聞かれても「あなた方の意見をまとめて、ふたたび検討して今週中にプランを発表する」に終始していた。決定の先延ばしも選択肢の一つらしいことは匂わせていたが。

 当直なので行くか迷ったが、貴重な体験だった。このような全科におよぶミーティングは滅多にない(これが初めて)らしい。Town hall meetingと言えば思い出すのはアイオワが舞台の映画"The Field of Dreams"だが、ちょっと映画みたいだった。研修医側の意見も参考になったし、経営側の対応も参考になった。これで状況がどう変わるのか、注目していよう。

4/01/2012

オプション

 三月も終わり。腎移植の6週間ローテーションが終わった休日にのんびりしている。移植の基礎が分かって、腎移植が好きになった。米国では腎移植フェローシップが腎臓内科フェローシップと別に組まれており、そこまでやりたい人は一年追加しなければならない。いっそ初めから腎移植ローテーションをもっと組み入れて三年間のプログラムにしておいてくれれば迷わなくてよいのにと思う。他にも集中治療とか、リサーチとか、はたまた緩和医療とか色々一年追加できるオプションがある。
 あれもこれもチョコチョコ取って、資格の額ばっかり増えて、結局どうするのかと思う。もしやるなら、本業の腎臓内科・総合内科でどこかでスタッフとして働きながら生涯教育のように何年かおきに取るほうが、学んだことを活かす場がはっきりあって説得力のあるキャリアプランになるだろう。いい加減、2008年から2013年までの5年間(日本時代の下積みもいれれば2005年からの8年間)積み上げて来たことを以て、どこかでスタッフとして思う存分やってみたい気もする。