6/24/2009

よく見せること

 回診で、患者さんに関する情報を訊ねられて知らない(あるいは思い出せない)時には、正直にそう言う。あるいはトギマギして立ち尽くす。これらはいずれも低い評価を受ける。後で調べます、とか「直接は関係ないけれどコレとアレならわかります」とか何とか言って場を乗り切るほうが高い評価を受ける。あるいは、最初から質問されないように(そして賢く見えるように)スラスラ立て板に水のプレゼンをする。診察所見などあやふやなところは適当に繕(つくろ)って諳(そら)んじる。
 これが、先輩たちがこっそり教えるunwritten ruleだ。"Don't stand"(立ち尽くすんじゃない)、"Make up"(適当に繕え)と。確かにattendingが見ていないところでどれだけ一生懸命やっていても、評価対象にはならない。結局は先生の前、つまり回診でのパフォーマンスで評価される。だから回診で悪い印象を与えるのはまずい。わからないことや苦手なことは、回診以外の場でこっそり解決、相談されるべきことなのだ。これに、まだ抵抗がある。

6/14/2009

最後の二週間

 二週間が過ぎ、attendingの先生が交代した。どちらも教育熱心なintensivistだった。最初の先生は担当研修医以外の研修医の先生に"What do you want to do?"と問いかけるので最初はトギマギした。なかなかプレゼンを聞きその場で方針を立てるのは勉強になる。そうやって新入院の患者さんに多くの時間を割くので、ほかの患者さんの議論は最重要な点に絞られたが。血行動態や呼吸生理の基本をよく教えてくれた先生だった。
 今日からの先生は、「一般病棟での私とMICUでの私は違う」と宣言して、①私が気にするのは患者さんが今にも急変しているか、安定か不安定かどうかだ、それを伝えよ。②すべてのシステム(神経、循環、呼吸、消化、腎臓、etc)をもらさずチェックせよ、漏らしがないように。③私は身体診察のbig proponentだ、身体所見はどんな検査にもまさり重要な情報を提供する。など何ヶ条かexpectationを挙げた。
 たしかにexpectationはほかの先生に比べて高いが、充実した時間になりそうだ。②をもらしなく回診で議論すると、回診後に議論し忘れたと後悔せずにすむ。またこの先生は毎日(週末も関係なく)午後4時にもう一度回診をする。そこでもう一度方針を確認することができるので良い。調べる課題を毎日与えて、それを発表する日時まできちんと決めてくれるのも良い。
 MICUで最もキツイのは、やるべきこと(絶対やらなければならない訳ではない)をやらずに置き、さらにそれを咎められることもない時の後ろめたさだ。もれなく確認してゆくのはthoroughで、人によっては「やってられないよ」と思うだろうが私には好都合だ。

6/08/2009

はや一年

 年に一度の内科全体のピクニックに参加してきた。今年はpotluck(持ち寄り)で、私たちは餃子を焼いて皆に食べてもらったところ非常に好評だった。餃子が受けるというのは割と予期していたが、実際自分たちが食べても美味しい出来で、よかった。三皿(たぶん70個くらい)焼いて、完売した。ヒダの作り方を説明するのは日本語でも難しく(ここをこうして、としか言いようがない)、手振りなしには不可能だろう。

 Mix ground meat with finely chopped green onion, season with sake, salt, sugar, and grated ginger, etc. Put a spoonful of filling on the center of skin, and wet the border with a touch of water by finger, Make folds on one side by streching a litte of that side of skin, and push it against the other side to seal.

 Put a tablespoonful of sesami oil on warmed pan, put the dumplings until the bottoms become brown. Add boiling water 1/3 as deep as dumplings and cover pan with lid to steam (for 2 minutes). Uncover and let water gone, scrape off the dumplings with spatula, but be careful not to break their skin. Serve hot on the plate.

 内科部長、研修プログラム長、秘書さんたち、今年卒業する人たち、今年から来る新1年目の人たち、そしてそれらの家族が来てにぎやかだった。偉い先生とも友達のように接する文化にはまだ慣れない、でも硬くなると喋るのも上手くないので少しは慣れなければと思う。新一年目の先生たちも、日本のような緊張してちょっと硬い面持ちがなく、リラックスして会話している。たしかにコミュニケーションには面倒くさい障壁は少ないほうが合理的だ。

6/07/2009

Kerala

 インドで最も高い山は、当然ヒマラヤ山脈にある。インド半島は、北のヒマラヤ山脈から南のスリランカに面した突端(Comorin岬)までなだらかに下り坂なのかと思ったらそんなことはない。中央~南部にデカン高原(Deccan Plateau)があり、東Ghats山脈と西Ghats山脈がその境界に位置している。西Ghats山脈のほうが標高がたかく、アラビア海から急峻に屹立している。多くの川がここを発してベンガル湾に注ぐ。
 そのGhats山脈の西側、アラビア海に面したエリアにあるKerala州が、私の同期研修医の父さんが育ったところ(本人は、二世)。インドでもっとも早く識字率100%を達成した州という(州固有の言語はMalayalamだが、はたして何語の識字率だろうか)。…などと病棟でヒマに飽いて何気なく調べているのを、別の同期に見つかった。彼女はロッククライミングが趣味なので、西Ghats山脈のことを知っていた。