4/06/2011

WD-40

 今日はスポーツ医学/整形外科の外来で一日お世話になった。膝の単純X線写真を見るときには4S(Space, Spur, Sclerosis, and Cyst)をチェックすると教わった。膝のMRI写真で半月板断裂やACL(前十字靭帯)断裂がどんな風に見えるかを学んだ。膝関節内への注射、肩峰下への注射は何をランドマークにするかを習った。今月あと3-4回行くので、やらせてもらうこともあるかもしれない。
 整形外科の診察や手技はまさに「百聞は一見に如かず」。たとえばrotator cuff tendonitisでは棘上筋(supraspinatus)が最も侵されるので、supraspinatus testが診断に有効だ。しかしこの試験、「腕を90°に挙げ親指が下向きになるようこぶしを反転させた状態で下向きの抵抗にさからって腕を水平に保てるかを見る」と言われるより実際診察を見たほうが理解が早い。
 さてこの手の外来ローテーションは、他の医師が患者とどのようにコミュニケーションしているかを観察できるのも楽しみの一つだ。アメリカ人医師につくと彼らならではの口語表現が学べて良い。たとえば膝関節の軟骨が摩耗すると表面にボコボコ穴が開いてしまうが、これをpothole(田舎道などにあり、運転するとクルマがガタンとなるような穴)と表現していた。
 他にも、足首が腫れた患者さんに「これ注射針を刺して吸いだせないの?」と聞かれて「身体の中の水には二種類あって、一つは風船の中の水、もう一つはタオルに滲み込んだような水だ。あなたのは後者だから刺しても吸いだせない」と言っていた。半月板断裂では、「木材のはじっこが裂けて(splint)チクチクするので、それをはぎ取る(scrape off)」と言っていた。
 患者さんがうまいこと言う場合もある。たとえば関節が摩耗した場合に潤滑液を補充する場合があるが、これを患者さんが"WD-40"と言っていた。WD-40とは商品名で、蝶つがい、窓のサッシ、自転車のチェーンまで何にでも使える潤滑スプレーだ。もはや英単語になっており、"WD-40 it"(それにWD-40を吹きつけろ)などともいうらしい。