6/08/2011

チューチュー

 今月は、研修修了までのわずかな時間を呼吸器内科コンサルトで過ごしている。今日は非心原性肺水腫の症例にあたり、色々学ぶことがあった。新しいコンサルトの電話を受け術後回復室に向かうと、若い男性が酸素を吸っている。看護師さんは「胸写に肺水腫が映っている」というが、若い男性の術後肺水腫と言われてもピンとこない。
 術中輸液も少なく、心疾患を示唆する病歴も一切なく心原性でないことは明らかだ。肺毛細血管から水が漏れているわけだが、なぜだろう。薬によるアナフィラキシー、神経原性肺水腫(椎間板ヘルニアの手術だった)、なんらかのアレルギー反応(アレルギー性鼻炎があってアレルギー科で診てもらっているというから)、など考えたがどれも当てはまらない。
 UpToDateで“non-cardiogenic pulmonary edema”の項を繰ってもARDSのことばっかりで、他にはHAPE(high altitude pulmonary edema)、re-perfusion pulmonary edema、re-expansion pulmonary edema、中毒(heroin、salicylate)だのしかない。利尿剤でさっさと除水しようかとも思ったが、心原性じゃないうえに原因が分からないので気が進まず、酸素化も悪くないので指導医が来るまで待つことにした。
 指導医に話すと、「negative pressure pulmonary edemaでしょ」とあっさり回答。UpToDateのリストも当てにならないものだ。改めて検索すると、術後の呼吸器合併症という項に載っていた。抜管後のnegative pressureにより肺胞が毛細血管から水をチューチューと吸ってしまう病態で、どういうわけか若い人に起こりやすい。治療は利尿剤、CPAP、supportive therapy。