「先生、私の名前わかります?」
ふと視線を上げると(断っておくが、今日は寝ていない)、看護師さんが名札を手で隠して人懐こい視線で私を見下ろしている。
もちろん知っている。
「なになにさんでしょう?」
でも少しあせった。というのもICUの看護師さん全員の名前を知っているわけではないからだ。名前を覚えることの重要性はいうまでもない。D・カーネギーの『人を動かす(原題:How to Win Friends and Influence People)』でも第2章の第4節で「名前を覚える」と触れられている。
電子カルテになって医局で遠隔オーダーなどすれば、もはや誰がいつその指示を受けているかわかったものではない。やはり「なになにさん、これお願いします」と直接その人の名前を呼んで一緒に仕事をするやりがいを忘れたくない。