12/15/2009

don't count your chickens

 腎臓内科のフェローシップの面接にあちこちから呼ばれだした。レジデンシーのときには完全な無名、外国の病院からの応募だったこともありツテのないところからは一切呼ばれなかったが、今回は特にツテもないのに招待状がくる。米国のある程度ちゃんとした病院で研修し、ちゃんとした評価を受け、ちゃんとした学術活動をしていれば、相応の顛末になるのだなあと実感する。
 とはいえ、面接に呼ばれたくらいではしゃいでいる場合ではない。自分の目標、専門的な医学知識、臨床経験、プログラムについての情報など、いわゆる「面接対策」「質問対策」をしなければならない。私はどうもそういう準備無しで押し通してしまうことが多いが、準備次第で将来が変わりうると思うと、今回はちゃんとしようと思う。

12/09/2009

women's lab coat

 病院は年に2着のネーム刺繍つき白衣を支給してくれる。今の白衣がぼろくなってきたので先月頼んでいたのが、やっと届いたという知らせを受けた。喜んで貰いに行って、さっそく着替えてみると何だかおかしい。第一に、小さい。Mサイズにしたのがよくなかったのだろうか。第二に、ボタンが左側についていて非常にボタンを掛けにくい。左利き用か?といぶかっていると、第三には背中にベルトのような帯が付いている。さっそく同僚の白衣と照合してみると、なんと女性用の白衣だった。男女の白衣がこんなに違うとは知らなかった。名前から女性と勘違いされたのだろうか。さっそく当該部署に報告して男性用をオーダーしなおしてもらった。さてこの女性用白衣、捨てても使っても好きにしていいと言われた。それで、ボタンをしなければきつくないので、しばらくは使うことにした。

senior debut

 今月から後輩の先生たちと一緒に働くようになった。幸い彼らが有能で仕事をこなしてくれるので、面倒をみる必要がない。その代わり、彼らが忙しく業務に追われている合間に、ミニ知識を教えるのが私の役目である。それはとても楽しい仕事で、自分にとっても大いに勉強になる。おかげで文献などを読む習慣が身に付きつつある。
 新入院の患者さんをとるときには、できるだけ後輩の先生にさきに診察させて、議論してから補足的に私が診察するようにしている。後輩の先生が得られなかった重要な病歴を私が聴きだすことも多く、フィードバックを与えることになっている。今のところうまくいっているが、もっと忙しくなったら私が先に診察してしまうこともあるかもしれない。

12/04/2009

submission

 論文原稿をひとつサブミットした。時間のある10月に、月末のタイムリミットを目指して必死に書きまくってよかった。他にもいくつか興味深い症例があるので時間をみつけて書こうと思う。自分が初稿を書きあげたら、nativeの先生に英語を直してもらう必要がある。しかし皆忙しいので、このプロセスに時間がかかる。ゴーサインが出れば、あとはネット上でアップロードするだけなので簡単なのだが。もし英語だけが問題ならば、さほど忙しくない先生(ひまなローテーションをしている同期の研修医など)にお願いしてしまおうかとも思う。

11/26/2009

Say it better

 教育回診で特徴的なことは、先生の質問に誰かが正解を言わなかったときにも「それは違う」と絶対に言わないことだ。"If I understand you correctly"、というフレーズが非常によく使われる。そして、回答者の説を敷衍して、それがどう間違えているかを回答者自身に気付かせる。当たらずとも遠からずという時には"Say it better"、とか"You are warm"、とかいう。自分がいつか教育回診するときに役立てたい。

11/21/2009

Boring

 仕事が退屈で、少し困っている。CCUは14床で他の集中治療室に比べて小さい。もっとも多いのは心筋梗塞後のフォローで、大きな梗塞をもった患者さんでも標準的な治療によってたいていすぐに回復して一般病棟へ出ていく。また看護師さんが仕事慣れしているため、ほとんどの業務をしてくれる。当直はそれなりに忙しいが、他の日は患者さんがどんどん転出していくし、暇だ。

11/17/2009

therapy dog

 当直中、病棟にボランティアのセラピードッグがやって来た。大きなチョコラブで、飼い主の女性についてのそのそ歩いていた。私のところにも寄ってきてくれたので少し首回りや背中を撫でた。私も大変に癒されたので、身動きすら不自由な患者さんならなおさらだろう。

11/07/2009

The MI that ate Chicago

 いま教わっている先生はgreat teacherだ。この先生と一緒に心電図と胸部レントゲン写真を検分すると、たとえ患者さんの情報がほかに何もなくても心臓と肺に起こっていることはだいたい察しが付いてしまう。教えてくれる内容も重要な概念ばかりで、仔細にこだわりすぎないのがよい。
 この先生は話す英語も洗練されており、独自のユーモアセンスがある。こないだは心電図が広汎な心筋梗塞(myocardial infarction, MI)を示していた時に"This is the MI that ate Chicago"と言っていた。後で調べると60年代の曲で"The eggplant that ate Chicago"という曲があることがわかった。

Thin red line

 CCU(循環器の集中治療室)では、患者さんが日常的に亡くなる。もともと重症だから、うまくいかなくても仕方ないと言い易い。でも本当にベストを尽くしたのか、といつでも自分に問いかける。診断は正しかったか、治療は正しかったか、判断は正しかったか。生死の境が狭い領域では、判断ひとつ、チーム医療の鎖ひとつが途切れてもうまくいかない。

 今日も患者さんが亡くなった。朝は元気だった患者さんだった。すべてが終わった後で、こうすればよかったのにと思った。思っただけじゃだめだ。行動につなげなければ。帰りのクルマの中で、Stevie Wonderの"Heaven Help Us All"が聞こえてきた。ゴスペル調の曲を聴きながら、ああ患者さんは今頃天国にいるのかなあ、とふと感じた。

10/27/2009

consent

 患者さんから手紙をもらった。ICUで診療にかかわった患者さんで、回復して感謝の気持ちを伝えに手紙を書いてくれたそうだ。私の名前や、You saved my lifeなどと書かれた手づくりの工芸品も一緒に送ってくれた。面はゆい気持ちになったが、ありがたく読ませてもらった。「お手紙ありがとう、私が特別なことをして助けたわけではないけど、回復したようでうれしいです」という返事を書こうと思う。

 ICUは殺伐したところだし、たいてい患者さんは鎮静下にあり喉に管が入ってとにかく苦しいはずである。会話もできない。でも、毎朝診察すると「今日は調子がいいよ」と身振りで示していた。人工呼吸器から離脱できるか瀬戸際だったが、本当に幸運なタイミングで喉の管を抜くことができた。もう一日遅かったら、気管切開になっていただろう。

 今日は以前に診た患者さんに電話してみた。彼らの症例を論文に書くためだ。もし承諾してくれなければ、ここ数週間書き続けていた原稿がパア(もっとも投稿しても通るとは限らないのだが)だった。前述の患者さんの手紙に勇気を得て「私は患者さんに親身に接していたはずだ」と受話器を取ると、患者さんも回復していたし、執筆にもOKしてくれた。