夜勤もいまのところ新患の数が少なく、よいケアーを心がけている。まず、患者さんのベッドサイドに座り落ち着いて話を聴き、問題の深層に迫る問診をする。「なぜ?なぜ?」と自問しながら、少しでも引っ掛かる点があれば聞き逃さない。患者さんのかかりつけ医でもあるがごとく生活歴や家族歴を聞き、患者さんにとって大事な逸話やエピソードにしばし耳を傾ける。仕事をしていれば「大変ですね」、仕事がなければ「お気の毒に」、子供がいれば「かわいいですね」、軍隊にいたなら「どこに行きましたか」。
問診でほぼ何が起きているか分かる。診察で自分の仮説を確認した後、何が起きているかについて病態生理にもとづいた平易な説明をして、治療と検査のプランを説明する。そのあと患者さんと家族の心配と質問に応じ、カウンセリングする。心配を分かち合って、状況に応じてどのような行動計画があるかを説明する。「突然ERにきて入院だなんてcrisisでとても心配だと思う」と伝えることにしている。
これだけやっても、朝になれば患者さんは別のチームに移っていく。退院すれば、あとは野となれだ。それでも自分にできることをしたい。僕はオーダーマシンじゃない。患者さんはモノじゃない。患者さんをよく知り、医学知識・経験と患者さんのバックグラウンドを合わせて問題の根底を見抜き、治療を継続して診られる医療を実践したい。
人と外国語と音楽が好きで、世界に通用する実力と癒やしをもったお医者さんを目指しています。国内外いろんなところでいろんな経験をしてきて、逆境も多かったけど、そのぶん得られたしなやかな強さと優しさをもって、周りの世界を少しだけ幸せにできたらなと思っています。
12/21/2010
12/13/2010
レモンを持ったらレモネードを作れ
今夜から夜勤に入り、このシフトは12/28の朝まで休みなく続く。あまり良い思い出がないのでI am not looking forward to it(嫌だなあ)、気持は暗い。しかし、後輩を指導したり、興味深い症例にあたったり、Reader's digest誌を読み始めたり、楽しいことも実はあった。今回は、最初から飛ばしすぎないこと、淡々と仕事をすること、暇な時間があれば確実に休むこと、をとりあえず念頭に置いてやってみる。本を持っていき読むのも気分転換になってよさそうだからやってみる。
12/11/2010
public speaking
Toastmasterに通いだしてから、仕事にも好影響がでているのに気付く。公の場(meetingやconferenceなどで)以前より自分の考えをはっきりと述べることができる。第一にfiller word(um, ah, like, you know, etc)がほぼ絶えた。第二に、ただcomplainするのではなく、statementを述べることができてきた。先日などは私の発言のあとにspontaneousに拍手が起こってびっくりした。meetingの後に、同僚から「僕もそう思っていたんだ」「賛成だよ」「よく言った」と言われたこともある。この訓練は始まったばかりだけれど、この調子で続けよう。
12/09/2010
Cardioplegia
CABG(冠動脈バイパス手術)とAVR(大動脈弁置換手術)を見学した。じつは今の病院で毎日のように行われていたのだが機会がなかった。今月は循環器科コンサルトで、2年目のフェローが「見てきたら」と勧めてくれたので実現した。循環器科フェローシップでは2年次で心臓外科ローテーションがあるらしく、1年目のフェローは「お前にはまだ早い、俺もまだ観たことない」とか言っていたが、外科医はそんなこと気にせず気軽に入れてくれた。手術中は麻酔科医のポジションからよく観察できた。
血管吻合や弁置換自体は、要は血管を縫い合わせるので器用だなあと驚きはしたが外科のテクニックであり、もっと驚いたのは人工心肺と心臓麻痺(cardioplegia)だった。右心房と上行大動脈にメスでスリットを入れ太いカニュラを挿入する。心臓はまだ動いているし血液で満ちているのであるが。右心房から静脈血を引いてきて、酸素化して大動脈に返す。磁石の力でlaminar flow(拍動のない一定した流れ)を生み出し、血液はトロトロ身体を流れる。
Cadiac outputに相当する分時循環流量をダイヤルで調節できるようになっている。肺循環をバイパスするので酸素化が必要で、吸入麻酔も人工心肺を介した麻酔に切り替わる。人工心肺下にある間は、主にperfusionistと呼ばれる人工心肺のテクニシャンが患者さんの循環を担当し、麻酔科医はあまりすることがない。循環の指標にはmixed venous O2 saturationを用い、リアルタイムでモニターしていた(75-80%を維持)。
Cardioplegiaは、クロスクランプ(右心房と大動脈をクランプして心臓を血流から遮断)した後に冷たいカリウム溶液に心臓を浸して心臓の動きを止めること。冠静脈には弁がないので、coronary sinus(冠静脈洞)から麻痺液を流すと静脈を逆流し毛細血管を介して冠動脈に達することで心臓全体を液で潅流させることができる。これをretrogradeといい、逆に大動脈側から潅流することをantegradeという。冠動脈に狭窄や閉塞がある場合は、動脈側と静脈側の両方から潅流しなければならない。
心臓を直接触る手技が終わるころに心臓を再び温めると、心室細動がおこることもまれではない。ただし、循環はまだ人工心肺で行われているのでこの場合の治療の緊急度は低いし、心臓が温まるにつれ元に戻る。必要に応じて心臓を除細動パドルで挟み30J程度の低い電流でショックを掛けたり、リドカインやアミオダロン、マグネシウムを用いる。人工心肺から血液を戻しunclampしたあと、血圧によってはepinephrineを用いるが、必要としない場合がほとんどである。
人工心肺がまわる間、約1300-1400mLの血液が体外にある。これをできるだけ戻すが、戻しきらない分はcell saverという器械にまわす。これにより術中の出血(ドレーンされた分)と人工心肺装置内の血液を回収し、洗って赤血球成分を体内に再び戻すことができる。なので心臓手術といえども輸血を必要とすることは少ない。なお透析と同様、体外のサーキットに血液を通すので術中はへパリンを流し、ACT(絶対凝固時間)をbaselineの約4倍に保つ。体内に血液を戻す頃にはプロタミンでへパリンをreverseする。
ECMOや人工心肺は、外科領域なのでたとえ内科ICUにいても見る機会はほとんどないのでラッキーだった。また、心臓外科手術といえどもここでは日常茶飯事で、CABGも私が入ったのはその日2件目だった。手術もメインの心臓外科医と第一助手のレジデントの二人で淡々と行われていた。CABGが4時間で、心臓に触って血管吻合している時間は2時間くらいと想像より短かった。術後の回復も早く、だいたい翌日には外科ICUから退出し一般病棟に移る。入院期間は5-7日という。
血管吻合や弁置換自体は、要は血管を縫い合わせるので器用だなあと驚きはしたが外科のテクニックであり、もっと驚いたのは人工心肺と心臓麻痺(cardioplegia)だった。右心房と上行大動脈にメスでスリットを入れ太いカニュラを挿入する。心臓はまだ動いているし血液で満ちているのであるが。右心房から静脈血を引いてきて、酸素化して大動脈に返す。磁石の力でlaminar flow(拍動のない一定した流れ)を生み出し、血液はトロトロ身体を流れる。
Cadiac outputに相当する分時循環流量をダイヤルで調節できるようになっている。肺循環をバイパスするので酸素化が必要で、吸入麻酔も人工心肺を介した麻酔に切り替わる。人工心肺下にある間は、主にperfusionistと呼ばれる人工心肺のテクニシャンが患者さんの循環を担当し、麻酔科医はあまりすることがない。循環の指標にはmixed venous O2 saturationを用い、リアルタイムでモニターしていた(75-80%を維持)。
Cardioplegiaは、クロスクランプ(右心房と大動脈をクランプして心臓を血流から遮断)した後に冷たいカリウム溶液に心臓を浸して心臓の動きを止めること。冠静脈には弁がないので、coronary sinus(冠静脈洞)から麻痺液を流すと静脈を逆流し毛細血管を介して冠動脈に達することで心臓全体を液で潅流させることができる。これをretrogradeといい、逆に大動脈側から潅流することをantegradeという。冠動脈に狭窄や閉塞がある場合は、動脈側と静脈側の両方から潅流しなければならない。
心臓を直接触る手技が終わるころに心臓を再び温めると、心室細動がおこることもまれではない。ただし、循環はまだ人工心肺で行われているのでこの場合の治療の緊急度は低いし、心臓が温まるにつれ元に戻る。必要に応じて心臓を除細動パドルで挟み30J程度の低い電流でショックを掛けたり、リドカインやアミオダロン、マグネシウムを用いる。人工心肺から血液を戻しunclampしたあと、血圧によってはepinephrineを用いるが、必要としない場合がほとんどである。
人工心肺がまわる間、約1300-1400mLの血液が体外にある。これをできるだけ戻すが、戻しきらない分はcell saverという器械にまわす。これにより術中の出血(ドレーンされた分)と人工心肺装置内の血液を回収し、洗って赤血球成分を体内に再び戻すことができる。なので心臓手術といえども輸血を必要とすることは少ない。なお透析と同様、体外のサーキットに血液を通すので術中はへパリンを流し、ACT(絶対凝固時間)をbaselineの約4倍に保つ。体内に血液を戻す頃にはプロタミンでへパリンをreverseする。
ECMOや人工心肺は、外科領域なのでたとえ内科ICUにいても見る機会はほとんどないのでラッキーだった。また、心臓外科手術といえどもここでは日常茶飯事で、CABGも私が入ったのはその日2件目だった。手術もメインの心臓外科医と第一助手のレジデントの二人で淡々と行われていた。CABGが4時間で、心臓に触って血管吻合している時間は2時間くらいと想像より短かった。術後の回復も早く、だいたい翌日には外科ICUから退出し一般病棟に移る。入院期間は5-7日という。
12/05/2010
RI
左冠動脈の主幹部から分枝するのは前下行枝と回旋枝であるが、ときに三番目の枝が分かれている場合がありこれをramus intermidius(RI)という。いままで循環器科でたくさんの冠動脈疾患に触れてきたのについぞ出会わなかったが、先日にこの枝がある患者さんを二人診た。この枝がある人はどれくらいいるのか、この枝は他の枝に比べてとくに詰まりやすいのか、他の枝が詰まった場合と比べて治療に違いはあるのか、などの疑問について自分で調べようと思う。
12/03/2010
protege
今月は循環器内科で、カテをみたり回診についたりしているが、昨年に二か月過ごしたCCUが基礎になっており余り新しく学ぶことはない。自分の考えと指導医の考えがだいたい同じなのを確認したり、違うところから学んだり、後輩の先生にいろいろ教えてあげることがメインだ。
CCUでついた先生は、Johns Hopkins出身の、うちの病院では最も優れた教育者であったが、先月一杯で転職され、郊外の病院の院長(administrator)になってしまった。これはうちの病院にとって大変な損失であるが、彼はシカゴ大学でMBAを取得されており、この決断もやむないのだが。
この先生に教えてもらったおかげで、心電図を読むのだって誰にも負けないくらいの自負がある。今となっては、先生に教わったことを自分が後輩に伝えることが使命と思う。他の指導医には教えられない特別な何かがあり、それを受け継いだのは(循環器志望でもないけど)他ならぬ私だと信じている。
CCUでついた先生は、Johns Hopkins出身の、うちの病院では最も優れた教育者であったが、先月一杯で転職され、郊外の病院の院長(administrator)になってしまった。これはうちの病院にとって大変な損失であるが、彼はシカゴ大学でMBAを取得されており、この決断もやむないのだが。
この先生に教えてもらったおかげで、心電図を読むのだって誰にも負けないくらいの自負がある。今となっては、先生に教わったことを自分が後輩に伝えることが使命と思う。他の指導医には教えられない特別な何かがあり、それを受け継いだのは(循環器志望でもないけど)他ならぬ私だと信じている。
12/01/2010
senior resident
シニアの仕事は、ジュニアレジデントを教えて、ジュニアレジデントが私と同じレベルで診断の議論ができ治療の計画が立てられるようにすることだ。だから回診中は、ジュニアレジデントが指導医にプレゼンするあいだ「いいんだよ」というfaithfulな眼で彼らを見ながらゆっくりとしばしば頷くのがおもな仕事である。指導医が何か質問しても、すぐに自分が答えるのではなく、ジュニアレジデントが知っているはずだという信頼のまなざしを向け、彼らに答えさせる。幸い、教え甲斐のある優秀なジュニアレジデントに囲まれて、愉しい月だった。
30 hour calls
今月で私の30 hour callは終りである。古き良き30 hour callも、ACGMEの規則が変わり来年からはすべてのプログラムで消滅する。朝から24時間のあいだ新患を取り続け、他チームのクロスカバーを対応し、翌朝回診して昼に帰るというのは大変である。しかし、夜間に来た新患を初期対応し、さらに引き続き診続けるのは継続性の観点から望ましいと私は信じている。さらに、昼に仕事を終えて半日休むほうが、休日が増えたみたいで私は好きだった。それに何といっても私はナイトフロートというのが大嫌いなのである。夜しか働かず、朝が来ればI don't careというのは性に合わない。とはいえ来年からは新しいシステムになる。診療の質が下がらないか心配だ、注視しよう。
11/22/2010
the road ahead
入院診療も、最近はルーチン化してきた感があり、何を目標にするか考えている。オーダーなどhousekeeping的な「仕事」、診察や問診取りの「アート」、診断・治療に至る「思考過程」、患者さんや家族をいたわる「プロフェッショナリズム」、医学知識をわかりやすく「教える」、などどれもそれなりになってきた。やってて楽しいし情熱もある。その先はなんだろう。
冷静に
外来で患者さんや家族がヤイヤイ感情的に何でもかんでも訴えて来ても、最近は押し流されることなく、恰も嵐の中で海底にある貝を見つけ出すように、何が問題なのかを問診と診察により見抜き、それにたいする効果的な対策と計画を立てて、患者さんや家族に伝えることができるようになってきた。寧ろ、ヤイヤイ言われながら心の中で「やれやれ、さあ核心はどこかな」と一息ついている自分を発見し、それを少し楽しんでいる自分に気づくことさえある。英語だから却ってできるような気がするが、日本語でもできるかは日本に行ってみないと分からない。
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