5/21/2015

Fake smile

 ILR(implantable loop recorder;1誘導のみの埋め込み心電図モニター)はMRIにcompatibleなことや入れっ放しでも良いことも、acotiamide(商品名アコファイド)がアセチルコリンエステラーゼ阻害薬で保険の用量が100mg一日3回食前なことも、ヨード過剰が甲状腺でのヨウ素の有機化とT4、T3合成を阻害するWolff-Chaikoff 効果などで毒性を与えるとされる認容上限量は成人で2200mcg/dなこと(日本人の食事摂取基準2010年版)も・・・

 肝硬変でのdiuretics-resistant ascitesの治療をUpToDateで振り返った(この群ではβブロッカーを切るbenefitのほうが続けるbenefitより大きいと考えられている)のも、TIPS(transjugular intrahepatic portosystemic stent)シャントの手技をYouTubeでみたことも、ハツカダイコンは20日で成長するが網状赤血球は1日で赤血球になることも、抗ミトコンドリアM2抗体関連Fanconi症候群(PBCを必ずしも合併しない;JJN 2011 53 719)があることも・・・

 みんな面白い。

 これらが面白いのは、単に知識を得ているからというのもあるが、それ以上にこれらの知識を得る過程で人と関わっているからだ。研修医の先生方の質問に答えたり、指導医の先生のレクチャーを聞いたり、研修医の先生からの質問に答えようとしているのを見かけた指導医の先生が教えてくれたり、学会のメーリングリストにコンサルトメールをして全国の先生方からアドバイスをいただいたり。

 このような関わりを通じて、帰国した私も周囲や社会に馴染んでいくのかなあ、などと考える。それから、このような関わりを楽しみにこれからも仕事をして行きたいと思う。

 しかしまあ、こういう「やったー」という瞬間は社会人であれば他の仕事をしていてもあるだろう。やはり医療職であるからには、患者さんとの関わりを生き甲斐にしたい。



 たとえば、患者さんの「嬉しい笑顔」と「悲愴な笑顔」の違いがわかること。ほんとうは心から泣きたいほどつらいのに、泣いてもどうにもならないから気を張って笑うしかない笑顔は、突き抜けて明るいのにどこか淋しげだ。見ていて、こっちが泣きたくなる。

 人の苦しみを分かるとか癒せるとか、そんな偉そうなことはいえないが、せめて「おかしいな」と気づいて、状況をよく聞いて、何かしてあげられないか考えて手を尽くし、必要ならその時ある医療社会的資源につなぐこと。

 「ひとつの心がこわれるのを止められるなら私が生きることは無駄ではない」とはEmily Dickinsonの詩(全文は下に)だが、そういう診療ができたらいいなと思う。