5/07/2015

antigen-null RBCs

 外来を終えたあとはぐったりするが、それでもこの研究については書いておきたいと思うから書く。A抗原、B抗原はO型糖鎖にそれぞれN-acetylgalactosamineとgalactoseがついているのだが、この結合を切る酵素であるfamily 98 glycoside hydrolaseを肺炎球菌SP3-BS71 (Sp3GH98)が持っている。結合を切ってしまえば、誰にも輸血できるantigen-null RBCsができる。

 しかし、この酵素は活性が低いのが難点であった。そこで分子生物学的にこの酵素をエンジニアリングして元の170倍にまで活性を増幅することにフランスとカナダの研究者達が成功し発表した(J Am Chem Soc 2015 137 5695)。これを応用すれば、輸血のみならずABO不適合移植においても抗A、抗B抗体の壁を乗り越えられるかもしれない(現在は免疫抑制と血漿交換で乗り越えているが;それについては以前に書いた)。

 この論文を読みたいが、アクセスがないのが残念だ。こういうのを何のひっかかりもなくアクセスして読めたらいいのにと思ってしまう。しかし、医学系の雑誌ですらないから、こんなものを各病院が購読していてはお金の無駄だ。それでもなんとかならないものか。出身大学の図書館に問い合わせたら購読しているかな、総合大学だし。卒業生にもアクセス権を与えてくれないだろうか…(ウェブサイトによればアクセスするごとお金を払わなければいけないみたいだ)。

 [追加]なんとか論文をゲットして読んでみると、この酵素は糖鎖の一番先っぽの結合を切るのではなく、先っぽの三つの糖(trisaccaride)ごと切離するようだ。この例を見ても、論文はabstractだけじゃ分からない情報がたくさんあるから、やっぱりフルテキストをPDFで欲しい。