5/08/2015

接遇の訓練

 パッチ・アダムスといえば映画にもなっているが、彼に一度会ったことがある。身体を使ったワークショップと講演を聴いたのだった。まず映画で今は亡きロビン・ウィリアムスが演じたパッチとは全然ちがって、実物は背の高い青髪のヒッピーでフォークの形をしたピアスを片耳にぶらさげたおっさんだったのが印象的だった(写真)。彼は講演でいろいろ言っていたが、今でも覚えていることのひとつに、彼が若い頃にランダムな電話番号に電話をかけ、「間違い電話でした」というのを繰り返していたというくだりがあった。これだけだとただの奇行というか迷惑だが、彼がこの行為を通して熱心に努めていた事は、電話を切るときに相手が「もっとこの人と話していたいな、電話を切るのがさみしいな」と思って貰えるようにすることだったそうだ。私個人は彼の講演をまた聞きたいなとは思わなかったが、ともかく彼は世界中の人々に慕われ、悩み相談に多くの手紙が届くそのすべてに返事を書いている(彼はコンピューターも携帯電話も使わない;文通だけする)。

 今の職場にきて、リハビリを受ける患者さんがリハビリ前の医師に診察を受ける、その役目を月に数回担当している。一人あたり数分で、調子はお変わりないですか?くらいで診察と言っても事前に測られた血圧をカルテに記載するくらい(必要があれば追加診察するが)というのを午前中に多いときは30人やる。これが世界に名高い日本の「外来30人診察」なのか…と体験できただけでも妙な自信?がついた。しかし、内科診療(診断のための問診・診察、検査、処方、再来予約、などを含めた)で一コマ30人診るのは相当な腕がないとできないのではないかと思う。それはさておき、このリハ前診察で私が心がけていることが、患者さんに何か希望とか「診察してもらえて良かった」と思ってもらえるようにすることだ。だから「(受傷されて)たいへんでしたね」とか「(これ位で済んで)よかったですね」とか「(~できるようになって)すごいですね」とか「(回復が遅く感じられるけど)時間がかかりますよ」とか「ゆっくりだけれどきっとよくなりますよ」とか声掛けしている。まるで接遇の訓練だ。パッチを目指して頑張るぞ?