5/29/2015

外来スキル

 以前、外来で怒りんぼうさんを診たときに「さあこの人の不満の原因は何かな?」と宝探しを始めるのは楽しい、それが英語だとやりやすいが日本語だとどうかなと書いたが、日本語でもちゃんとできた。まず第一には、信頼を得るためにどこまでも丁寧かつ誠実に接することだ。そしてこちらが相手の言いたいことを正確に理解できず相手が「だからそうじゃないっていってんでしょ」と怒気を現すたびに、それを一つ一つ大切に拾って謝り、それでもめげずに粘り強く問診を続けて相手が伝えたいことを理解したい(そして力になりたい)という姿勢を明確に示すことだ。助けられるかはわからなくても、全力で助けようとしていることを示す(見せつける位のつもりで見せる)ことで患者さんの気持ちもやわらぐことが多い。

 また、こちらからそれを察することができるが相手が言いにくそうにしている時には、敢えて患者さんの柔らかい触れられたくない部分に触れる勇気を持つことも重要だ。虎穴に入らずんば虎児を得ず。すべては患者さんのためなのだから、医療者がスルーしてはいけない。藪をつついてヘビを出しても、ヘビの扱いに慣れてヘビ退治をすればいいだけのことだ。最後に、魔法の言葉は共感だ。「大変でしたね」、「それは困りますよね」、「私だったら耐えられないと思います、よく我慢してこられましたね」、など。これらのさまざまなスキルを惜しみなく使って、最後に患者さんが「ありがとうございました」といって診察室を後にすると、やっぱり嬉しいし、むしろそういうやりとりのほうが楽しい。怒りんぼう外来でも始めるかな。でも怒りんぼうさんだけじゃなくて穏やかさんと話すのも悲しみさんと話すのも楽しいから、いまのままでいいや。