3/07/2011

Critical thinking

 外国生活への適応は3つの段階を経るという。1つ目は"honeymoon phase"、外国の新しい考えや文物どれもが新しく面白く心酔する時期だ。2つ目は"critical phase"、今度は悪い面をみたり不条理な思いをしたりして幻滅する時期。そして3つ目は"integrating phase"、いわゆる酸いも甘いも受け止めて自国と外国の良い面を合わせて二国間の架け橋になる時期だ。
 "80-20 rule"といえば、「(組織などで)80%の仕事は20%の人が行っている」という法則であるが、Toastmastersの月刊誌に"20-80 rule"というのが紹介されていた。これは「アメリカ人は、困った時に20%の時間しか原因究明に費やさず、残りの80%をかけて問題を治そうとアレコレ画策する」というものだ。確かに彼らは「ああでもない、こうでもない」と考えるばかりで先が見えない状態に我慢が効かない。「これをやってみよう、あれをやってみよう」というのが好きだ。
 この記事を読んで、先の3段階を思い出した。日本から来たばかりの頃は、米国のassessmentよりplanを重視する姿勢が新鮮だった。日本のやり方は、何を決断しようとしても「でも…」という批判やデメリットばかりが強調され、慎重かもしれないがポジティブさに欠けると思われた。米国が"20-80"なら、日本は逆に"95-5"、「95%かけて議論するけれど、肝心のどうするかについて話す時間は5%しかない」というわけ。回診も無意味に長く非効率的に感じられた。
 それが、こちらで働くうちに米国流はあまりに浅薄で性急な診療に感じられ「もっと<なぜそうなのか>考えようよ」と強く思った。低カリウム血症で何も考えずにカリウムを補充するなどとはその好例だ。高ナトリウム血症で、胃管からの自由水供給不足が原因と認識せずに、D5Wを静注補液して数字を直したら退院させたという馬鹿げた例もあった(もちろん再入院になって、そこで私が診ることになった)。
 いまでは両方の良いところを合わせて"50-50"、「バランス良くちゃんと原因究明もするし、ちゃんと解決もする」というスタイルが身に着いたと感じる。米国滞在歴の長い人と接すると、彼らがそういう偏らない見方で日本も米国も評価できているのに気づく。私もこれから、批判的な思考能力と両文化の昇華統合を課題にしようと思う。