3.カルテの書き方
先生は私達のチームを代表してカルテを書くのですから、求められるレベルは高いです。そこで、私達は先生が質の高いカルテを書けるようにサポートします。フェローの先生がいるときは彼らがオーダーを出してくれますし、カルテも彼らが見直してくれるでしょう。私達が先生のカルテに求めるのは以下のような点です。
□ 臨床的な問題点が揃っている
□ 病態を把握している
□ チーム回診で議論、計画した内容を反映している
□ 読みやすく的確な表現で書かれている
形式はプレゼンと同じSOAPフォーマットで書いてください。SとOについてはプレゼンのところを参照していただくとして、ここではアセスメントとプランの書き方をお話しましょう。一番最初に意識してほしいのは、5W1Hです。
WHO 誰が WHAT 何を
WHEN いつ WHERE どこで
HOW どのように (HOW MUCH どれだけ)
WHY なぜ
これらを意識してみてください。そのうえでどう書くかについて、ここに私が使うアウトラインを示し、それぞれの要素について解説しましょう。
症例要約
問題点1
-診断根拠・原因
-治療
-経過
-今後・予防
問題点2
(以下同様)
症例要約:簡単にどんな症例かわかるような一文です、これがあると症例を知らない人が読んでもすぐにどんな症例かわかります。私がよく書くのは次の形式です。
[重要な既往・重要な治療歴など] ある [年齢・性別] が [症状、あるいはすでに診断がついていれば診断] で [入院日] に入院、 [重要な経過]。
例 ANCA関連腎炎の再燃でステロイド・アザチオプリン治療中(ベースラインCr 2mg/dl)の60歳男性が、利尿剤とARB増量による腎前性AKI(Cr 3mg/dl)で11月1日入院、AKIは輸液後に軽快したがステロイド増量による高血糖に対してインスリン導入、教育中。
問題点:診断が付いているなら、診断。付いていないなら、症状。診断や症状のみならず、かけるなら重症度や原因も書きましょう。
例 糖尿病性腎症、CKDステージ4
例 夜も眠れないほど重度の掻痒
診断根拠・原因:診断の根拠となる症状、バイタルサイン、診察所見、血液検査所見、画像所見、その他診断の決め手となる検査結果を書きます。結果待ち検査も書きます。【ステップアップ!】診断の原因の原因まで書けたら、立派な医師です。
例 (肺炎)発熱、呼吸器症状、低酸素血症、胸部X線。培養、尿中抗原は結果待ち
例 (誤嚥性肺炎)もともとの脳梗塞後の嚥下機能低下+鎮静剤による意識レベル低下
治療:「抗生剤」「降圧剤」など医学生レベルの記載ではなく、「クスリの名前」「用量」「いつから何日目」を記載してください。そうしないと、次になにをしたらいいのかわからなくなります。
例 ロサルタン 80mg 一日二回、11/29に40mgから増量
例 LVFX 500mg 24時間ごと、11/30に48時間ごとから変更(腎機能改善)
経過:何を追っているのかを具体的に明確にしましょう、そうでなければよくなっているか悪くなっているかもわかりませんね。
例 解熱、酸素化改善、呼吸数改善、CRP改善
例 痒みは夜間眠れる程度に改善したが、日中少しまだあり、頓用のクスリを1回内服している
今後、予防:ここがその日の私達のプラン、「で、どうするの?」の部分です。【アドバンス!】ただ「こうしよう」ではなく、「Aを目標にBをして、Cに気をつけながらDをフォローして、EになったらF」と先を読むプランを書けると優秀な医師です。
例 抗生剤を静注で継続、培養結果がでたらそれに合わせて変更、トータル14日で終了予定
例 血液透析で2Lを目標に除水、血圧をフォロー、血圧低下時には除水を下げる
質の高いカルテが書けるようになると、たくさんの良いことがあります。一つ目は、頭の中が整理されます。二つ目は、退院サマリーがすぐかけます(後述)。三つ目は、情報提供書がすぐにかけるようになります。そして四つ目は、読む人に「できる」と印象づけ、院内での評価が上がります(覚えて置いてください、先生のカルテをみんなが読んでいることを)。Good luck!