8/26/2008

久々の夏休み

 20個のシフトを終えて、残りの日々は休みである。だからこれは休暇を取ったわけではなく、前半に休み無く働いただけである。思えば仕事を始めてから、夏に旅行するのは初めてだ。旅行先について職場で話したら、そこで以前リバーガイドとして住んで働いていた先輩がおり、「おお!その名前を聞いただけで心がしめつけられるほどだ(それくらいすばらしい所だ)!」と胸を押さえながら言っていた。楽しみだ。

8/24/2008

Not a spider bite

 MRSA(mersaと発音する)による皮膚感染症が多い。虫刺されと間違えられやすいが、膿が皮膚にたまりやがて破れる。その前に来る人には、切開する。日本では患者さんが皮膚科に行くから私が診ていないだけかもしれないが、とにかく多い。
 皮膚が弱いのか、手が汚いのか、風呂に入らないのか。MRSAはたいがい院内感染で問題になる菌だが、それが街中にもいるというのは抗生剤の乱用によるのか、院内の感染防御対策がザルなのか。良く分からない。街中のMRSAは院内のMRSAに比べれば耐性は弱いみたいだが。

8/17/2008

safety net

 精神科救急も診る。29号室がそのための部屋で、自殺企図などの患者さんが入る。日本でも救急患者がたくさん運ばれてくるところで働いていたのだが、圧倒的に件数が多い。ところが、自殺者数は日本のほうが多い。米国は人口は二倍なのに自殺者数は日本とほぼ同じである。思うに、米国の人々のほうが、死にたくなったときにちゃんと主張して相談するのではないか。

8/14/2008

米国人情

 実は救急外来で、看護師さんに「あなたほど丁寧は人は初めてだ」と言われている。とても大事なことだ、意図的にやっている。患者さんは、時として切迫感と待たされる不満とでniceでないことがあるので最初のうちはびびって奥手にやっていた。
 しかしそれでは駄目で、先回りして「待たせて申し訳なく思う」「痛みはどうだ」「困っていることはないか」と伝えなければいけない。そうすれば「いやいや、忙しいんだろう」「少しはいい」「ありがとう」と返ってくる。そういう意味では、日本よりずっと辛抱強く理解がある。
 なんといっても、残念だけれど、病院で患者さんは弱い立場にあって、受身の立場にあるのだ。だって病気なんだから。医療従事者の仕事は、それをadvocateすることである。取り除ける不満は解消し、不安は共有して、ときに笑いに変えて、一緒にいて過ごしやすい人でなければならない。
 それでか、患者さん医療従事者との会話はおどろくほど雰囲気が明るい(もちろん毎回ではないが)。軽いともいえる。表面上はとにかく大変フレンドリーという、アメリカ的コミュニケーションの真髄か。いやなことを笑い飛ばすなんて、なんだか大阪みたいでちょっといいなと思う。

8/12/2008

喉元すぎれば

 11日間で10のシフト、明日は休み。ひさびさに夜に眠れる。そのあとまた働いて、17日間で15のシフト。今度は深夜勤務がなく幾分気が楽だ。27時までの勤務も面白いのだが、なかなか時間通りには帰れない。なにより生活リズムの確立が困難であった。
 そして深夜勤務だと、どうしても帰宅してから何か食べたくなる。午前3時に終わってすぐに眠りにつければよいのだが、昼夜逆転しているので意外と起きているのだ。周囲の研修医に聞いてもそうらしい。悪しき習慣と分かっていても、なかなか。生体時計がずれているので、ちょうど夕食のような感覚だ。

8/09/2008

ディクテーション

 いまの救急には診察室が30ある。あふれると、廊下や控え室のようなところに患者さんをいれて40人弱になる。診療は2チームに分かれ、それぞれ一人の指導医と2-3人の研修医からなる。計算上、研修医が6-10人、指導医が15-20人の患者を把握していることになるが、時間差でシフトが組まれている(約2時間ごとに誰かしらが入れ替わる)ので必ずしもそうではない。
 とはいえ指導医はいちどきに大変おおい患者さんを把握しなければならない。彼らはカルテは書かない代わりに、研修医のプレゼンテーションと自分の診察などをもとにディクテーションをする。それが後からテキストになって電子カルテ上に載る。これこそ将にプレゼンテーションのよい見本と復習と気づいた。自分の診た患者はリストになっているので、意識的に(声に出して)読み返すことにした。 

連続勤務

 10時間の勤務が苦に感じないときと、途中で疲れを感じるときがある。前者のほうが却って能率的に働いている。場所柄そこにいる限りはオンなので、途中で疲れるとちょっとしんどい。どこか休憩室でもあればよいのだが。fountain drink(コカコーラや甘い紅茶などが飲み放題)はあるので時々汲んで飲む。
 とはいえ、プレゼンテーション、コンサルテーション、手技などをどんどん経験できる楽しい研修である。徐々に仕事にも慣れている。しかも10時間×20=200時間/月の勤務は、実は週休二日の9時-5時生活と同じである。後半にまとまった休みもとれて事実上の夏休みにもなったから、まずまずではないか。

8/07/2008

お味はいかが

 患者さんが何か食べたいという。悪心がおさまり、少し試してから帰りたいのだという。(ああそうですか、では何か買ってきてください)と思ったが、看護師さんに聞くとなんと救急外来には患者さん用にサンドイッチとジュースが用意されているのだ。日本でもお茶はあったが、おにぎりはなかった。
 患者さんは救急外来でけっこう多くの場合に4-5時間は過ごす。だからお腹もすく。経口摂取が望ましくない場合(手術になるかもしれない、など)を除き、患者さんにこれらの飲食物を提供しているようだ。まだ味わったことはないが、どうやらターキーサンドイッチらしい。おいしそう…?

スタイル

 ああ救急だなあ、という指導医にであった。方針の決定に重要な情報を迅速に得て、方針が決まるや否や行動に移る。誰がどの患者を診ているかを瞬間に把握して、前倒しで様子をきいてくる。指導医がなかなかつかまらず相談できないことが、救急外来の律速段階だ。だからこの先生と働いていると、仕事が速い。
 仕事の速い先生と働いて、自分のスタイルをあわせると、自分も仕事の速いタイプになれる。日本での研修時代にも経験したことだ。私も、そっちのほうが好きである。まだこの先生が真の救急事態でどのように立ち振る舞うかは見ていないが、今後のシフトで一緒になったら自ら救急患者さんを選び働きぶりを体感してみようと思う。

8/06/2008

仕事

 それなりに殺伐した雰囲気の救急で、それなりに気分が荒むこともある。あとで相談すると決まって掛けられるのが、"Don't take it personally."という言葉だ。気にするな、あなた個人に向けられたものではないと。訳はわかるが、まだtake it personallyという具体的な意味がピンとこない。
 とはいえ良いこともある。縫合した傷を翌日チェックしたら良い具合であったときなど。また仕事仲間と徐々に打ち解けたときなど。こちらで女性の看護師さんと接していると、同性の友達のような印象を受ける。堂々としているし、(私の思う)女性的なしぐさや言葉遣いがないせいかもしれない。

サービス

 レストランに行ったら、救急外来とレストランは類似していると思った。提供する行為は違うが、客(患者さん)の流れが似ている。レストランでは、ウェイターがテーブルに注文を取りに来て、それを厨房に伝え、料理を運ぶ。ときどきテーブルまで来て料理を気に入ったか聞き、デザートの注文をとる。最後に会計をして、客が居なくなるとテーブルを掃除して次の客が入る。
 救急外来も、私が診察室に入ってきた患者さんのところにいって訴えを聞く。指導医に報告し、方針をたてて検査や治療を行う(ここは看護師さんがしてくれる)。ときどき患者さんの様子を見て、検査結果を伝えたり症状が改善したかを聞く。最後に、入院するか、帰宅するか、帰宅するなら薬は処方するか、後日どこを受診するかを伝える。患者さんがいなくなると、診察室のhousekeepingをして次の患者さんが入る。
 レストランでは、客が給仕の満足に応じてチップを払う。病院では、それはない。だって、医師が提供するのは医療であり、正しい診断と治療を行い正しい知識を与えることだから。でも患者の訴えを聞いたり、共感したりで満足してもらうことも重要だし、場合によっては患者さんの都合や信念に妥協することもある。

8/01/2008

ドラマのような?

 初シフトを無事終えた。いきなり一員として働き出すのだから、考えてみると大したものとも思う。でもなかなか慣れないことが多かった。超緊急でもないかぎりは意外と時間がゆっくり流れる印象を受けた。逆にそれが、患者さんを待たせているようで心苦しくもある。とはいえ、少し急がされている感覚で動くので概ねよいと思われる。
 カルテは、主訴ごとに分かれたチェックシートのような紙に記載する。チェック項目のすべてを聞くことはできないし、その必要もないのであるが、記載漏れのようで後ろめたさを感じる。またアセスメントなどを記載する欄がほとんどなく「どう考えてどうなりました」と書けないので、やりっぱなしにしているような感覚に陥る。
 代わりに上級医、コンサルタントに対する要領を得た口頭でのプレゼンテーションが要求される。最初に方針に関わる重要な情報を伝えるのが役目で、検査や治療をさっさかオーダーし、そのあとどうなったか経過を報告するのが役目。それは日本でもどこでも同じだが、より口頭の役割が大きい印象だ。