10/27/2008

評価

 年に2回の、program directorとの面接(評価)があった。そこでは、各月ごとの指導医や先輩研修医からの評価を平均したものが発表される。10段階中の5とか6とかいう評価は、ある程度客観的なものとみなされているということだ。A先生は5、B先生は6と評価したので平均は5.5という具合だ。また経験を積むごとに5.5が5.8という様に、向上していくことが期待される。

 それよりも低く自己評価している場合はunderestimate、卑下ということになる。「自分なんてまだまだ」といって低い評価をつけているのは、正しい自己評価ができていないということで決して良いことではない。研修医が終われば、だれも月ごとの客観的な評価などしてくれないのだ。目標は生涯をつうじて自分で自分を正しく評価して質を高めてゆけることだ。

 逆に、人を評価することにも慣れなければならない。すでに病棟で実習している医学生の評価シートを何人分か記載したが、「自分に厳しく人に甘く」で何でもかんでも10点10点・・とやりがちだ。ちゃんと見てくれていないということで相手を失望させることにもなる。でも、4点と書いて学生が不服と考えれば、彼らには評価の理由を質す権利がある。すべてはassertivenessに通じる。

振り返り

 5分でよいから新患を取ったときに関連するUpToDate(診断や治療について簡潔にまとめられたデータベース)を読もう、と薦められた。これは複数の指導医がアドバイスしていたので「患者さんの疾患、治療について勉強する時間がない」と嘆く研修医に対する最も基本的なアドバイスなのだろうと思われる。

 また、ある指導医の先生は"Interns and students, this is your team."とおっしゃり、カルテには自分の思うこと、こうしたらよいという方針などを具体的に大胆に書きなさい、Roundでも、自由に思うことを述べなさい、とのことだった。「馬に上手に乗れるようになる方法は、馬に乗ることだ」というたとえ話も別の先生から聞いた。

 自信なく、間違えをおそれて黙ったりオドオドしていると余り良い仕事は出来ないのに対し、ハキハキと思うことを述べたり分からないことを聞いたりしたほうが仕事がはかどる。わかっているのだが、ハキハキした人を見ると閉口してそっぽを向きたくなる、心のじめじめした部分…。

 Assertiveな態度、aggressiveではなく。自分の考えを率直に伝えることがconflictを生むのでは、とか、波風を立てたくない、という気持ちでいると、結局は自分が何を考えているかを相手に推測させることになり、それは実は相手にとっては不快なのである。

グラフィック

 学会(地方会)のポスター発表を控え準備している。日本にいたときは、A4普通紙で何枚にも分けて作ったものを当日貼りあわせた。今回は病院にcommunicationなる部署があって、新聞紙4枚分ぐらいのおおきな、表面のコーティングされた紙に印刷してくれる。原稿を持っていったら、ポスター担当の人が「ここの字はもっと大きくしたほうがいい」とか色々アドバイスしてくれた。図工のようで楽しい。

10/16/2008

Guess how many

 ハロウィンが近いので、病棟のナースステーションも紅葉やどんぐり、案山子などの紙細工が張られている。トウモロコシ粒のようなキャンディー(candy corn)が詰められ封された瓶があり、なんでも皆で何粒はいっているかを当ててハロウィンの日に計数するらしい。賞品は10$のガスチケットだそうだ。病棟以外のところも、扉におばけのオーナメントが飾られたりしている。

 ハロウィン当日には、バーでパーティーがあるようだ。以前教会だった建物をバーにしたところでやるので、雰囲気も楽しめるかもしれない。コスチュームを着てくるらしい。ちなみに、信徒が少なくなったなどの理由で使われなくなった教会を、desanctifyなる儀式を済ませて他の目的に使われることはままあるらしい。たいていバーになるのが妙な感じだ。

10/07/2008

アメリカ英語だろうか

 Touch base withとは、(人に)連絡をとる、という意味である。このイディオム、想像どおり野球から発想されたものらしい。たとえばホームランを打った人が各塁を確実に踏んでホームインするようなイメージだろうか。
 患者さんの方針について各科コンサルトと連絡をとり確認しよう、という場面で使われる。意外と各シチュエーションで使われる言い回しは決まっている。今のようなシチュエーションでは、90%がtouch base with、残りがfind out、talk toなど。

10/06/2008

primary service

 退院を決めるのは直接の主治医である。しかし、多くの場合患者さんを複数の科が同時に診ている。彼らはコンサルタントの立場だが、患者さんの病気によってはコンサルタントが退院を事実上決定することもある(たとえば胃潰瘍で来た患者さんがいたなら、胃カメラをした消化器科のコンサルタントが決めるというような)。
 それで、コンサルタントが退院させていいと考えているので退院させたら主治医はそうでなかったりする。大変なことだ。主治医が、毎日回診して議論して方針を決める指導医であれば確認しやすい。ところが、担当する患者さんのなかには、それと別に主治医がいて、顔を合わせることもなくカルテと電話だけで方針を確認する場合がある(non-service patient)。これはとくに慎重にならねばならない。

急がば石橋をまわれ

 いつかタイ料理店に行ったときに食べたfortune cookieにこんなメッセージが入っていた。
      
It takes less time to do a thing right than it does to explain why you did it wrong.

 Henry Wadsworth Longfellowというアメリカの詩人・言語学者の有名な引用句だそうだ。仕事していて、この言葉が正鵠を得ているなとしばしば思う。これでいいのかな、と思ったら迷わず確認しないといけない。これでいいのかなと疑わないほどassumeしているときが問題である。それから、引継ぎや当直明けなど間違いが起こりやすいとき。
 また、言葉がたりないせいもあるが、間違ったことをしているように思われたときに、釈明するのが手間である。もともと彼らは思ったことを感情込めてどんどん口にするから、相手の言い分をきくだけでも一苦労なのである。先手をうって確認、確認。そのたびにいちいちポケベルを鳴らしたり、ポケベルを鳴らされてちかく電話まで歩いたりと大変な手間なのだが、慣れるしかない。

10/04/2008

そう遠くないクリスマス

 最近は日本から持ってきた白衣を着ている。米国の白衣とちがい、両サイドに手をズボンのポケットに入れられるようなスリットがなく、全体としてピッタリしたデザインで、生地がパリっとしている。学生のころは米国の白衣を格好よく思った。いまは、日本の白衣のほうが自分の身丈に合って、却って自信を持って振舞える。

 ただシャツとネクタイは、こちらのほうがカラフルで素敵だ。時間があるときに、ショッピングモールでセールしていたら買にいこうかなとも思うが、意外と今あるもので自足しているのでそれほど本気でもない。クリスマスの時期にでも買おうかな。

二ヶ月目の介入

 二ヶ月目になって、早く病院に出勤するようになった。5時半には病院につく。データ収集をするのに、診察して、看護師さんのバイタルサインの記録をメモして、血液検査の結果をメモする。これらは順々にわかるので、順繰り病棟をまわってカルテに記載していく。8時半にはseniorに問題点を報告して、9時半のラウンド前に出せるオーダーは出しておく。

 帰る前には、患者さんの翌日のカルテのうちで、薬のリストや問題点など事前に記載できるものは記載しておく。前日から次の日のことを考えておくことで、診療がより連続したものになる。一時はこれを持ち帰り、家のパソコンから電子カルテが見られるようにして翌日の予習をしようかとも考えたが、いまのところ家では仕事せずに済んでいる。

 日本で研修医一年目だったときも、同じことが要求されていたはずである。でも正直にいってthoroughなカルテは書けていなかった。早起きも苦手だった。いま早起きが出来ているのは、早寝できているせいもある。日本に居たときは夜10-12時まで働いていたうえ、科によっては24時間first callで途切れがなかった。