外来、とくに移植前の患者評価(Pre Eval)は集める情報が多い。ぱっと思いつくだけでも:
原疾患、生検の有無、いつからどのように発見され進行したか、透析歴、アクセス、腎臓内科/透析医、尿量、移植歴、移植施設、ドナーのタイプ、グラフト不全の理由、生検の有無、生体ドナー候補の有無、心疾患、がん既往とスクリーニング歴、血栓症、抗凝固薬・抗血小板薬の有無と適応、間欠的跛行の有無、肝炎ウイルス・HIV・細菌感染の有無、高血圧と低血圧(透析時のミドドリン使用の有無)、糖尿病と低血糖(インスリン使用の有無)、FRAILスコア(倦怠感、自立歩行距離、自立階段昇降、既往の数、体重減少)、輸血歴、手術歴、内服薬、アレルギー、生活面のサポート、アドヒアランスとそのサポート、住所、喫煙歴、家族歴
などを聞く必要がある。そのための情報源は大きく二つあり、一つは患者、もう一つは電子カルテである。
筆者は最初、診察室に放り込まれてこれらを一気に聞けるほど頭のなかにリストが入っていなかったこともあり、患者の前でいくつか質問するとすぐに「えーっと、なんだっけ・・」とネタ切れになった。
しかし、だからといってカルテから情報を得ようとすると、干し草のなかの針(needle in the haystack)を探すような感じになる。「これかな?・・いや違う、これは眼科のカルテだった」という具合だ。
しかし、ある程度リストが頭の中に入ると、患者さんに筋道立ててストーリーを引き出せるようになる。また、電子カルテも押さえどころを知ると、要領よく情報を抽出することができる。検査結果をいくつか参照するうちに、ストーリーが浮かび上がってくるようにもなる。
何事も経験であるが、成長を速めてくれるのがstaffingという制度である。
まずフェローが先にカルテを読み診察室に入り、得た情報をスタッフに伝える。その話を聴きながらアテンディングが要点をまとめ、足りない情報をカルテや患者から追加で得る。フェローはそれを見ることで、「次はこれを聴こう」「次はここを参照しよう」と学べる。
外来教育の根幹にかかわる話であるが、これがないと、ピアノの先生に師事せずにピアノを独学で学ぶ生徒のようになってしまう。日本でstaffingがある外来は稀で、教育病院の救急外来ですら、研修医が全症例をstaffingしてもらえる保障はない(それによる悲劇は、報道の通りである)。
自分でも患者を診つつstaffingもしなければならないので、アテンディングも大変だろうが、基本的な情報をフェローが得てくれるので、結局は時間とエネルギーの節約になる。どうにか、この制度が日本の外来にも広がるとよいなと思う。
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