移植外来は手厚いと書いた中で言及しなかったのが、薬剤師さんの存在だ。スタッフルームで患者全員のカルテを見張ってくれているので、「この患者さんは腎機能が悪化したのでBactrimとValcyteとFluconazoleは週3回にしよう」などとすぐに教えてくれる。そうした変化はスタッフならすぐ気づくのだろうが、見落としがない心強さがある。
また、QIという意味では、タクロリムスの血中濃度に基づく用量調節アルゴリズム(protocol)などを作成してくれるのも薬剤師さんである。こないだ試案が紹介されたが、「例外や注意点はこれこれ」「医師(NPさんのこともあるので、最近はproviderと総称する)に連絡するのはこんな時」「PrografとEnvarsusではこう違う」など、餅は餅屋の仕上がりであった。
さらに、「Leflunomideはすべての患者に有効ではないが、著効した症例は確かXXXさんだったよね」「Leflunomideは催奇形性が強いので妊娠希望時にはcholestyramineで胆汁酸ごと吸着するんだ」「Belataceptのレジメンはまちまちだが、ランドマーク・スタディのBENEFIT試験のレジメンがそもそも奇妙で・・(以下、詳細なレジメンの紹介)」など、聴けば何でも教えてくれる。
参謀・軍師のような存在であるが、そんな薬剤師さんは一日にして成らずであり、PharmDという特別な資格をもって専門分野に特化して経験を積んでいる。こうした人材に触れると、医師の役割は、単に知識をため込むことではなく、そうしたリソースを活用しつつ、患者ごと状況ごとにベストな判断を下すことだなと再認識する。