アメリカはあまり生体腎移植をしないとよく言われるが、献腎移植が相対的に多いだけで、実際には日本よりもおこなわれている。一回腎移植カンファレンスに出席しただけでも、生体腎移植を可能にするさまざまな仕組みがうかがわれた。
たとえば、kidney voucher programである。米国ではNational Kidney Registry(NKR)が中心に行っており、standard voucher、family voucher、swap saver、real time swap saverなどがある。
Standard voucherとは、自分が本来提供したかったレシピエントとマッチせず腎臓を提供できない場合に、他のドナーに提供することで、そのレシピエントが「腎臓優待券(voucher)」をもらう。それにより、本来あげたかった相手が移植されやすくなる。
Family voucherとは、非特定の相手に腎提供することで、家族5人に「優待券」を届けることができる。それにより、いつか誰かが腎臓病になった際に、その人が移植されやすくなる(券を使えるのは一人)。
Swap saverとreal time swap saverは、paired kidney donation(いわゆるドミノ移植)に関係したもので、自分の家族や友人が(体調不良などで)移植を受けられなくても、ドミノを止めないように腎提供を行った場合、その家族や友人が(体調がよくなったら)優先的に移植を受けられるというものだ。
また、生体腎移植ドナーの経済的負担をカバーするDonor Shieldという制度もあることがわかった。治療・検査費用、移植を受けるための旅費(同じ町でできるとは限らない)だけでなく、仕事ができない間の保障、入院中の子供や高齢者の世話にかかる費用など、さまざまな負担がカバーされるという。
(NKRのYouTubeビデオより) |