7/25/2024

Fertility and Pregnancy

  移植後の妊娠についてのレクチャがあった。まとめると、

 妊孕性は(催奇形性のある薬を使っている)移植後6か月余りで回復するため、避妊が重要である。避妊の手段としてはIUDが効果が高く、異物だからといって移植後の禁忌ではない(CJASN 2020 15 563)。エストロゲン含有の薬剤は血栓症・血圧上昇・蛋白尿増加・SLE再燃のリスクがあるため、慎重にモニターしなければならない。

 免疫抑制薬のなかでもアザチオプリンは安心して使える薬であるが、FDAの表示は今でも「D」である。しかし、これは高用量で催奇形性を示すデータが開発初期にみられたためで、移植やそのたの免疫疾患で現在用いられる低用量では安全である。

 現行ガイドラインは移植後1年は妊娠を遅らせることを推奨しているが、その場合でも条件として、①クレアチニンが1.5mg/dl未満、②蛋白尿が0.5g/d未満、③日和見感染リスクが低い、④催奇形性の薬を使用していない、⑤1年以内の拒絶がない、を挙げている(AJT 2009 9 S1-S155)。

 妊娠関連のアウトカムについてはTransplant Pregnancy Registry Internationalというレジストリがあるが、妊娠中の高血圧は約半数に見られ、児の体重は低めである(CJASN 2020 15 120)。また、分娩は32-36週が最も多く(AJT 2013 13 3173)、移植そのものは帝王切開の適応にならない(むしろ、切開する近くに移植腎がある可能性もあるので注意が必要だ)が、帝王切開の割合が高い。

 妊娠中の拒絶は5-10%とされ、これは一般の腎移植患者と同じ確率である。また腎グラフトの予後については、非妊娠患者と比べて差がなかったとするオーストラリアの報告(JASN 2009 20 2433)があり、その後のメタアナリシス(Transplantation 2020 104 1675)でも同様の結果となっている。